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パチ7虎の穴

パチ7虎の穴

2026.07.08

【ロマンティックパチンカー】No.21 ロマンティックパチンカー

ダスト ダスト   パチ7虎の穴

パチンコを初めて打ったあの日のことを鮮明に覚えているのは、それに至るまでの明確なきっかけがあったからだろう。

高校の卒業式翌日、俺は朝イチでコンビニに走った。バイト求人誌「フロムエー」を買うためだ。校則ではアルバイトが禁じられていたが今日からは自由の身、晴れて働くことができる。

ストイックな我が両親は高校生が現金を持ち歩くことを良しとせず、欲しいものは参考書代をちょろまかす、昼食代をもらい断食でしのぐ、などをして何とか手に入れてきた。

しかし、これからは自分で金を稼ぎ何だって自由に買えるようになる。明るい未来に胸を躍らせながら、購入したフロムエーのページをめくった。

当時は時給が1,000円以上のアルバイトなどそうそうなく、3桁が当たり前だった。それでも俺には大金だ。どのバイトも魅力的に見えて、どれか一つになど絞れそうにない。

無難にコンビニもいいし、背伸びしてカフェもありか…。そんな風に頭を悩ませていた俺の目に「日給7,000円」という文字が飛び込んできた。引越しのバイトだった。やはり肉体労働系の仕事は給料が高いのだろうか。

中学高校の6年間バスケットに打ち込んでいた俺は、体力には自信があった。なにより「日給」というのがわかりやすくてよい。10日働けば70,000円、1ヶ月で210,000円にもなるではないか。

決まりだな。

迷いなく募集欄に掲載されていた番号に電話すると、女性が出た。早速翌日から出社し、まずは優しい先輩たちによる研修を受けて欲しいとのことだった。そう説明する彼女の声は透き通るようであり、その主が若く、相当な美女であることは想像に難くない。

こいつは楽しくなってきたぜ。俺はほくそ笑んだ。金だけでなく、もしかすると恋人までゲットできるかもしれない。

翌日指定された事業所へ到着した俺は、スキップをしながら受付へと向かった。そこにいた女性は電話の主とは恐らく別人、母親と同世代に見えた。残念ながら恋は芽生えそうにない。

若干テンションを下げながらも案内された部屋へ行くと、20人ほどの若者が神妙な顔つきでパイプ椅子に座って研修の始まりを待っていた。バイトとはいえ俺にとっては初めての仕事だ。急に緊張を覚えつつ、とりあえず周囲に習い腰を下ろそうとしたその時だった。

ズバン!というまるで雷が落ちたかのような凄まじい音と共に引き戸を開け、1人の男が入室してきた。

パチンコ版田沢。九九八十八!!と言い切る姿で知られる。

その男を見たら、魁‼男塾(1985年〜1991年まで少年ジャンプで連載された超人気漫画)の読者であれば98%は「田沢」とあだ名をつけるだろう。そのくらい、両者の顔は酷似していた。ふと、この人はカラオケに行ったら「荒城の月」を歌いそうだなあ、と思った。

果たして、力強く「起立!!」と叫ぶ姿はまさに田沢そのもので、辺りの空気が急速に張りつめていく。その場にいた全員の本能が、この男の機嫌を損ねてはならない、と判断したのだろう。

田沢はそこから長々と、引越しという仕事の辛さを軍人のような口調で語り続けた。そして、しっかりと全員のモチベーションを下げたところで、「この中で、引越しの経験者はいるか」と問うた。

父の仕事の関係で全国各地を転々としてきた俺は、その勢いに呑まれ「あります!」と元気よく挙手してしまった。すると、田沢の目が格好の獲物を見つけたかのように、キラリと光った。

「ほう…。おまえ、引越しのバイト経験があるというのか」

あ、経験ってそういうことだったのね、と急いで否定しようと試みたが、田沢の圧はそれを許さなかった。

「おまえには、特別な仕事を覚えてもらう」

そして、別室にいくよう指示された。そこには新たな指導者がいるという。恐る恐るその部屋に入ると、1人の男が仁王立ちで俺を待ち構えていた。
 

パチスロ版大衆院邪鬼。あまりにもデカ過ぎる初登場シーンは有名。

でかい。183センチある俺より、さらに一回りでかい。魁‼男塾の読者であれば、間違いなくその男に「大豪院」というあだ名をつけるだろう。

まず大豪院は「おまえにはチームリーダーになってもらう。だが、給料は上がらない」という衝撃の一言を放った。固まる俺を前に、大豪院は次々と伝票の書き方などの説明を始めた。

そのプレッシャーはすさまじく、聞き返しなどすれば即座に真空殲風衝を食らう雰囲気だ。一瞬たりとも気を抜けない。マンツーマンのレッスンは2時間程度で終わったが、俺にはゴッドファーザーを1から3まで一気見したくらい長い時間に感じられた。

そして、ついに退勤時間を迎えた。ボロボロになった身体で歩く帰り道、ほうほいのてい、というのはこういう状態を指すのだな、と思った。明日も研修を受けねばならない。帰宅した俺は、何とかベッドに辿り着くと、泥のように眠った。

その翌日、俺は駅前のマクドナルドにいた。出勤を前に少しでも英気を養うべく、大好物のハッシュポテトを3個注文する。しかし、どんなに食っても気持ちは前向きにならなかった。

イヤホンから流れる音楽に耳を傾ける。BON JOVIが高らかに「信念を貫け」と歌っていた。この頃の俺は洋楽にどっぷりとハマっていたが、このまま大豪院や田沢の指導を受け続けたら、1ヶ月後には「軍歌」や「君が代」を聴いているに違いない。

出勤時間が迫ってきたが、どうしても立つことができなかった。「あと5分」が10分となり、1時間となった。遅刻確定だ。あの猛者たちが、それを許すはずがない。もはや、あの職場に行くことはできない。

しばらく放心していた。いつの間にか10時を過ぎている。はじめてのアルバイトを、たった1日でブッチしてしまうとは…。自分が情けなくて、涙が滲んだ。

その後、マクドナルドを出た俺は、あてもなく街を彷徨った。そして、1時間ほど歩いただろうか。目の前には、パチンコ屋があった。

平日の真昼間からパチンコに興じる人間など、ヤンキーか社会不適合者か愚連隊しかいない。当時の俺は、パチンコに対してそんなイメージを抱いていた。

じゃあ、今の俺にはお似合いじゃないか。俺は、ニヤリと笑った。どうせなら、とことん落ちてやる。

ケバケバしいネオンの下にある自動ドアをくぐり入店した途端、大音量のマイクアナウンスが耳に突き刺さった。

「いらっしゃいやせいらっしゃいやせ〜。本日も全台大開放、全台大開放にして皆様をお迎えしておりやす〜」

そのダミ声を浴びながら、高校時代にバスケットよりも打ち込んだ麻雀をモチーフにした台を発見したので着席、見よう見まねでハンドルを握ったところたった500円でフィーバーだ。隣に座っていた前歯のないナイスミドルに「1回交換」のルールを教えてもらい玉を流し、そのレシートをカウンターに持って行ったところ謎の景品を貰った。さらに、それを謎の小屋に持って行くと、なんと5,500円も貰えた。

この間たったの10分。時給にすると、33,000円だ。

こりゃ、バイトなんてしてる場合じゃねえな。

10代の俺が、そう思ったのも無理はあるまい。そして、この時はパチンコとのお付き合いがその後30年も続くとは、夢にも思っていなかった。  

生き物は、食物を摂取しその栄養素が血となり、肉となり、骨となる。現在の俺の肉体は、今まで口にした食事から造られている。

一方、人間の「人となり」は、これまでの経験、読んだ本、見た映画、接してきた人たちなど、自らを取り巻くあらゆる環境によって形成される。

ある日、実家で20代前半の頃に使っていた第一勧業銀行(現みずほ銀行)の通帳を見つけた。どの月も給料日後に、特殊なおろし方による大きい出金がある。

26日、50,000円、20,000円、40,000円…。

この数字を見ただけで、ピンときた。恐らく朝イチから吉宗を打っていたのだろう。だが、天井間際で金が尽きる。とりあえず20,000円おろし、天井到達。放出されたボーナスはバケで、ゾーンを回し引っかからず再び金が尽きる。ムキになって3度目の「ATMおかわり」を決行。40,000円を握りしめ、激闘の果てに無事死亡。当時の記憶が、湧き出るように蘇った。

自宅に戻り、妻にこの通帳を見せると「ちょっとした冒険小説のようだね」と言われた。そして、「全部でいくら負けてるか計算してみよっと」と電卓を取り出したので、妻の手から通帳を奪いゴミ箱に叩き込んだ。

確かに、途方もない額を溶かしてしまった自覚はある。俺は、ホールで大金を失ってきた。

だが、と思う。

あの日、あの時、パチンコと出会い、青春の大半を捧げた。そして、数え切れないほどの敗北が、今の俺を創り上げた。その経験があったからこそ、憧れだったパチスロのコラムを書くことができるようになったのだ。

金は失ったが、夢は叶った。それだけで、パチンコと出会えて幸せだった、と胸を張って言える自分が、最近割と嫌いじゃない。  

さて現在パチンコ・パチスロ業界が置かれる状況は、非常に厳しい。ホールは減少し、ファン離れも深刻だ。

そんな中、動画演者やライターの存在は、ホールにとって大きな集客力となっている。それは紛れもない事実だ。

だが、忘れてはならない。ホールの主役はあくまでパチンコであり、パチスロなのだ。

そして今、気鋭のクリエイターにより堂々とホールの顔となれる至高の名機が誕生した。  

シェイクこそ、ロマンティックパチンカーとして最後の実戦を飾るにふさわしいマシンだ。

そのゲーム性は、前回述べたように完成されている。さらに、スペック面に関しても非の打ち所がない。

設定1はボーナスこそ重いものの、BTが連チャンするまで耐え忍べば何とかなる。2は若干夢がないように感じるかもしれないがボーナスが軽く、ほんの少しの奇跡を起こすことができれば何とかなる。5、6にいたっては、言わずもがなだ。

つまり、シェイクはどの設定でも熱い戦いができるのだ。

そんな神台にもかかわらず、現状シェイクはほとんどのホールでバラエティコーナーに1台だけという不遇の扱いを受けている。

そんな中、設置から半年以上が経過した今、シェイクの増台という英断を下したホールが存在する。恐らく店長は相当な好漢に違いない。今の時代に、我が国が必要としているのはこういう人物だと思う。もしも彼が政界に打って出るというのなら、俺は迷いなく一票を投じるだろう。

さて当日、1番手で開店を待ち無事にシェイクを確保した。軍資金は3万円、BT機とはいえ6号機なら十分な額だろう。いざ、実戦開始である。  

あれれ。店長、間違えて4号機のシェイク入れちゃったのかな。

思わずそう呟いてしまった。無理もない。3万入れてまさかのノーボーナス、1000ゲームハマりの達成だ。

ロマンティックパチンカー史上初の「ATMおかわり」に心が揺れる。6号機のシェイクに天井はない。際限なく金を入れ、ゲーム数を積み上げたからといって、ボーナスを引ける保証はない。

とりあえず、珍しくきちんとカウントしていた小役と今の状況を照らし合わせ、確信した。

「これは1だ」

俺は、ナンバーワンという言葉が大好きだ。そして、前述のとおりシェイクの設定1はハマりを耐え忍び、BTが連チャンすることでその真価を発揮する。

1のBT継続率は50%、俺がパチンコを始めたころのCRパチンコ機の確変継続率も50%だった。そんな中、俺はデンデンデン(2000年に豊丸からリリースされた名機、巷では「ぜんぜん出ん」と揶揄されることもあった)で確変14連達成という記録を持つ男だ。

もしかすると、どれだけハマろうとも台移動しない俺に、店員さんは「お地蔵さんがいます」とインカムで報告し合っているかもしれない。だが、俺には確信があった。ハマったからこそ、この台は噴く。

そして、その予感は見事に的中する。

総投資34Kで引いた最初のボーナスはお約束のREGも、その出玉が呑まれ追加1K、70ゲームで当選したBIGで挨拶代わりと言わんばかりにSJACを引き、いきなり600枚オーバー。さらに42ゲームで再びBIG、これも500枚オーバーで、クレジットはあっという間に1000枚を突破した。

さらに見せ場は続く。

その後若干呑まれてREG、その後74ゲームで引いたBIGで、本来なら設定1では50%しか継続しないはずのBTが、いつまで経っても終わらない。

このBIGだけで1241枚獲得し、直後に連チャンしたBIGでも943枚と、奇数設定のポテンシャルを遺憾なく発揮することに成功した。

もしかすると5か…?

一瞬思った。だが、風の噂に「小役確率は嘘をつかない」と聞いたことがある。

ベル1以下、スイカ1以下、チェリー1以下。3役の小役確率が、この台が1であることを如実に物語っている。

BT継続率が50%を大きく上回っている今こそやめ時に違いない。俺は、席を立った。

以下、結果である。

SHAKE BONUS TRIGGER
投資35K
回収 2429枚(46K)
total +11K

正直に言おう。出来過ぎだ。ATMおかわりを決行した直後は顔に修羅の表情を宿していたが、景品交換所を背にした俺は、世界中の誰よりきっと素敵な笑顔を浮かべていた。ファイナルバトルということを考慮して、神が優しくしてくれたとしか思えない。

さて、前述したように、今の業界を取り巻く状況は厳しい。

だが、俺が初めてホールに足を踏み入れたあの頃も、決して明るい時代ではなかった。パチンコのCR機にはあの伝説の「確変5回リミッター」が搭載され、まさに低迷期を迎えていたのだ。

その苦境を何とか乗り越えたかと思えば、今度はパチスロに「4号機の終焉」という大きな転換期が訪れた。

それでもこの業界は、幾度となく逆風を乗り越え、そのたびに新たな魅力を生み出してきた。そして、その積み重ねの先に今がある。

シェイクのような台を生み出してくれるクリエイターや、シェイクを増台してくれるような店長が灯りとなって、業界が進むべき道を照らしてくれるはずだ。

だから、未来はきっと、明るい。
 
 

ロマンティックパチンカーは、今回が最終回となります。

作中にもあるように、20代、30代という人生で最も大切な時期をパチスロに捧げてしまった自分にとって、パチスロライターという肩書には小学生がパイロットに憧れるのと同じような感情を抱いていました。

そんな自分にコラムを書く機会を与えてくださったパチ7様には本当に感謝しております。

稚拙な文章で読みにくい点も多々あったかと思いますが、「自分が読みたいコラム」を書けたという自負はあります。

そんな中、面白かった・応援する、を押してもらえたりコメントを頂いたりしたことは、本当に励みになりました。

この連載は終わりますが、例の漢気あふれる店長のホールには今後も通う所存です。もしお会いできたら、一緒にシェイクを叩きましょう。

ご愛読いただき、本当にありがとうございました!!


2026年7月8日 ダスト

(C)宮下あきら/集英社・東映アニメーション
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代表作:ロマンティックパチンカー

ルパンでパチンコを覚え、アステカでパチスロを覚え、ミリオンゴッドでギャンブルを覚えました。子供が生まれた時に一旦現役から退きましたが、先日7年ぶりにパチンコ屋に行き、再び悪い心に火がつきました。リハビリ感覚で、ハネモノ、遊パチから始めようと思います。
プレイスタイルはロマン打ち、愛があれば確率なんて超越できると信じています。嫌いな言葉は下ブレです。

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