「ドラゴンギャル　修羅の野望」(後編)――台湾ギャルとの死闘

■ポエムで始まるクソな夜

　キリンの首が長いのは、遠くに住むあのひとのことをいつも探しているからなんだって。
　どうも、マスクド･モリタです。

【前回のあらすじ】
『ドラゴンギャル　修羅の野望』で勝利した流れからの、ひとり飲み。
　初めて訪れたBARのお酒で盛り上がっちゃった結果、おむつについて語りまくるマスクド。
「この店が気に入ったから」という謎すぎる理由で、おむつへのおしっこを披露するが、まさかの失敗。
　ズボンをびしょびしょにして退店という屈辱。ズボンのケツが濡れてんの恥ずかしいから暗がりを通って帰ろう。
　そう決意したものの、このあとさらなる展開が待っている――。
　……いや、こう書くとひとりで暴走したように感じるけど、実際は違うんだから！
　本当に楽しく過ごし、スタッフともお客さんともめちゃくちゃ仲良くなったんだから！
　少なくとも自分の中ではね……。うん。

→前編はこちらから
http://pachiseven.jp/columns/column_detail/9738#contents


■川崎ドラゴンギャルはけっこうなご年齢

　ズボンの後ろを思いっきり濡らし、とりあえずは飲み屋街を脱出しようとしたぼく。

　暗い道に入るまであと50m。
　たった50m……なんだけど、そこへ行くまでに立ち塞がるのは、10人以上の呼び込み。

　下手にテンション上がっちゃったぼくが、それらすべてを回避できるわけもなく、まずは思いっきり黒人なブラジル人呼び込みと軽いトーク。

「ブラジルパブ、どうっすかー？」
　いや……見てよ、これ。お漏らししちゃってんのｗ　今日は家で洗濯だよ。

「プププｗｗｗ　やっちゃいましたねー。ならまた今度お願いしまっすー」

　やけに日本語上手いな、川崎の街はやっぱすげー……なんて感想を抱きながら、次。

「オニサン、マッサージどーぅおー？」
　マッサージね、ハイハイ。

　この街に住んで10年、風俗のお店は数々制覇したけど、外国人マッサージ店ののれんは一度もくぐったことがない。
　それは、興味がないとかじゃなく、単に「評判が悪い」から。
　友達の感想も顔見知りの呼び込みも、「マッサージはほんと行くもんじゃない」、そんな意見で一致してるんだよね。

　でも、この日は……やっぱり、なんかおかしかったんだろう。
　いつもなら軽くかわすのに、立ち止まって話し始めちゃったんだから。

　あのねー。いま、そこで飲んでたんだけど、おむつにしたはずのおしっこが漏れちゃってさ、見てよ、このズボンｗ
「アハハハハ！　オニサン、おもらし？　オモシローイ」

　もうこの時点でガッチリ腕組まれてるから。2人にね。
　ま、それはほかの店でも同じやり方するんだけど。
　このくらいで負けたりしないよ、ぼくは。

　2人はどっから来たの？
「アタシたち台湾ネ」

　へー、じゃあ台湾マッサージだ。有名かどうか知らんけどｗ
「有名じゃないけどキモチイイよー。オニサン、いくつ？」

　40歳。
「ウソだヨー！　28歳か32歳デショー？」

　たしかに若く見られる方ではあるけど、さすがにこれは「しゃらくせーなぁ」と思ったから、サバ読んでやった。
　逆サバ。

　あ、間違えた！　53歳だ。昭和35年生まれ。
「ギョッ！」

　ウハハハハ！ｗ　なにその反応！ｗｗｗ　台湾人もギョッって言うんだｗｗｗ
「ワカンナーイ。でも、ホント見えないネー」

　ハハハ。ありがとう。それはともかくとしてさ、いまからウチ帰ってこれ洗濯しなきゃならんのよ。
「ダイジョブダイジョブ。店で乾かせるし、洗濯もできるヨ！」

　え？　洗濯機なんてあるんだ！　いやー、でも風呂も入りたいしさー。
「ダイジョブダイジョブ！　シャワーも使えるヨー。ダカラ行こう」

　ハーッ、すげえな！　なんでもあるじゃんか。
「ソウソウ。キモチイイヨー。30分3,000円ネ！」

　でも、洗濯してもらっても乾かす時間ないもんね。
「ダイジョブダイジョブ！　泊まってけばいいヨー」

　ギョッ！　ギョギョギョッ！　てか、何回ダイジョブ言ってんだよｗ
「オニサン、おもしろいしかわいいし、アタシ、マッサージしてあげたいナー」

　いや、そういっても金取るでしょｗ
「それはソウヨｗ」

　よし。ま、行ってみるか！

「ヤッター！　どっちにスル？」

　もうね。
　この濡れたズボンで歩いて帰るより、おむつの処理してシャワー浴びてマッサージしてもらえるなら、3000円は安いって思っちゃったんだよね。

　あと、会話がちょっとおもしろかったし、なによりこのお漏らし見ても、引くどころかガンガン攻めてくるところが気に入った。

　で、2人から選べってことね。
　台湾マッサージの全貌は知らないけど、ヌキは考えてなかったし、話弾みそうなオバさんの方を。
　あえてだよ。
　すごかったんだから、ほうれい線のシワ。

「わーい。ウレシイね。じゃ、イコイコ」


■オイルの価値、右肩下がり

　雑居ビルにエレベーターを2人で上がる。

　そして、玄関をくぐると……ほー、これが台湾マッサージか。
　……って、ま、あれだ。ヌキありの外国人マッサージ屋の一般的な作りだね。

　手前右側にソファ、左側がシャワーと洗濯機。
　奥がマッサージルームで、5つのベッドがカーテン1枚で仕切られている。
　軽く観察してみると、ソファ横のカラーボックス上にぬいぐるみが3つ。
　プーさん、リラックマ、そしてオリジナルキャラクターっぽいパンダ。

　このパンダ、かわいいねー！　って、なにこのプーさん！！？　額にマジックで“ココ"って書いてあるｗｗｗ
「アタシ書いたの。かーわいいでしょー？ｗ　オニサン、おむつはどうするのー？」

　かわいいかわいいｗ　意味わかんないけど。
　えーと、おむつはゴミで出したいから、コンビニの袋とかあるかな？
「アルヨアルヨ。なんでもアル。そしたら、おむつ脱いだらシャワー使ってネー」

　ここで、さっき選ばなかったもうひとりの女のコが登場。
「オニサン、アタシも一緒にどう？　3,000円追加で3Pシヨ！」

　3Pてｗ　そういうのいらないから。
「イイじゃんイイじゃん。アタシもマッサージしたいヨー」

　それはいらないけどさ、ならおむつ脱ぐとこ見ててよｗ

　といって、ふたりの目の前でサイドを破る。
　おむつってさ、ズボン穿きながらでも捨てられるように横からビリビリ破ける仕組みになってんだよね。

「アハハハハハ！　こんなひとハジメテ！　アカチャンだネーｗ」
「髪の毛長いから、オンナノコ！ｗｗｗ」
「オンナノコオンナノコー！ｗ　シャワー浴びるとき、髪の毛濡れるカラ、上の方でお団子したホウいいヨ」

　なにがおもしろいかわからんけど、オンナノコの連呼。
　あと、アカチャンは……おむつ脱いだあと、ぼくのモノを見て言ったのかな。
　まあ……うん、ストレートでいいと思う。

　ファック！！！(思わず出ちゃった、心の声)


　気持ちよくシャワーを浴びて、洗面台にあった「匂い付き化粧水」なんてものも使わせてもらって、お茶をいただいてからいざベッドへ。

　が。
　マッサージが下手ックソ！
　一応、円滑なコミュニケーションのため、「あ"ー、そこ効くねー」なんて言ってはいるけど、本職のマッサージ師には遠く及ばないし、正直力も全然足りてない。

　なのに、5分も経ったあたりで始まったんだよ。
　追加オプションの営業が。

「オニサン、オイルマッサージ、もっとキモチイイよー」
　いや、いらないから。
「オイルは17,000円だけど、先に3,000円もらってるから14,000円でイイヨー」

　高っ！　吉高っ！　吉高由里子っ！！！
「なーにソレ？ｗ　じゃあさ、今日だけプラス10,000円でドウ？」

　いや、高いよ！　高いっていうか、いらんから。
「オイルマッサージして、そのまま眠ってもイイヨー。仕事はココから行けば？」

　会社行く準備してないし、オイルとかほんと興味ないの。
「もうスグ時間来ちゃうヨー。早く決めて」

　だからさっきから断ってんだろ、こっちはｗｗｗ
「じゃあ、8,000円！　オニサンだけ特別ダヨー」

　値段の問題じゃないんだってｗ
「そっか。ハイ、時間ネ」

　うん。気持ち良かったよ。お、ズボンも乾いてるし！　ありがとう。

　で、フルチンにズボンを穿いたんだけど、
「オニサン、ホントにオイルいいのー？　5,000円にしとくからオネガイ！」
　と言いながら、チャックを開ける。

　いやいやいや、なに脱がしてんのよｗ　てか、値段下がりすぎでしょｗｗｗ
「オニサンやさしいから、特別ヨ」

　でも、いらんっ！　はっきり言っちゃうとしつこーーーーいっっっ！！！
「ソウカ、ワカタヨー。また今度のときはお願いネ。じゃ、最後にお茶ドウゾ」

　このお茶が当たり前のようにさっきの飲みかけだったこと。
　そして、コンビニ袋に入ったおむつがなぜかぼくに手渡されたこと。

　オプションをすべて断る偉業を成し遂げたのにまったく勝った気がしないまま、この雑居ビルとはさようなら。


出典：マスクド･モリタ「ぱちんこ帝国データバンク」（スポニチアネックス、2013年09月30日）


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