私も　３／４

葵と四葉の連絡先を交換してからも俺は相変わらずパチスロを打ち続ける

いや、変化はある

ほぼ毎晩、葵か四葉からの連絡が来るようになった

と、言っても結構な割合で二人だけで会話は成立してるんだが

ただ、時々、俺にも話を振ってくるので、それに対して返事をしている

俺が素っ気無い返事を返すと四葉が

『あんたね、もうちょっと面白い返事しなよ』と無茶振りをされる

正直、困る反面、それが嫌だという事もない

高校を中退しパチスロで生計を立てていると、どうしても社会との繋がりが薄い

パチスロで生きているという事自体、社会のはみ出し者だ

加えて俺は喋れない

今、葵と四葉の会話だけが俺の社会との繋がりなのかもしれない

そんな事を思いながら残り３００ゲーム以上残ってるARTを消化する

設定は推測するに５、６ではないだろうが薄い所を引いた

はっきり言うと、こういう勝ち方は好きではない

運だけで勝つのなら、もっと金額も効率もいい稼ぎ方もあるだろう

だが、俺がパチスロを打つのは、確かに運に左右される部分はあるが

技術介入や推察力を駆使すれば勝率がグッと上がる部分が好きなのだ

正攻法で自分の力が反映されるギャンブルはパチスロくらいだろう

色々言われているが俺はパチスロは、まだまだ大丈夫だと思ってる

大丈夫じゃないと困る、というのもあるが

規制があるなら、それに打ち手や店舗、メーカーが順応すればいいだけだ

順応できない奴は脱落すればいい

俺みたいにパチスロしか無い人間は、しっかり順応する

せざるを得ない、とも言えるがな

まぁ、今日の勝ち方だと、あまり偉そうには言えないが

打ちながら色々と考える事が増えた

これも、葵と四葉のおかげなのだろうか

なんて考えていたらARTは終わっていた

引き戻しも無いし、まだ１９時にもなってないが設定も無い台を打ち切る程には殊勝じゃない

一撃８０００枚以上はヒキだけにしては十分だ

８０００枚弱を流して交換して帰ろう

そういえば、この店は二人と会った店舗だったな

二人とも、この近くに学校があるんだろうか？

「よぉ、お兄さん」

店舗を出て考え事をしてる所に見知らぬ男が６人、考える間も与えず取り囲んでいた

「お兄さん、結構出したねぇ」

「実は、このお店、俺らのテリトリーなんだよ」

「最近、この店を荒らしてる奴が居るから俺らパトロールしてんだよね」

ふざけるな、ここの店員でもない奴が何を勝手な事を

「俺らのお店を荒らしたんだから、お兄さんには罰金を支払う義務があります」

ニヤニヤと気持ち悪い顔を近づけやがって

しかし、既に囲まれてしまって逃げるのは無理だ

「ここだと迷惑かかるから、ちょ～っと裏道に行こうか～」

仕方ない、悔しいが逃げられない以上、従うしかない




袋小路になっている裏道に入ると不遜な態度を更に悪化させて気持ち悪い笑顔で俺に迫ってきた

「とりあえず、出した分のお金、俺らに提出しよっかぁ？」

俺は財布から今日の勝ち分を出して渡した

「あ？舐めてんの？」

鈍い痛みと、鈍い殴打音を感じ取ったのは同時だった

「お前さぁ、まだ財布に金、絶対あるよね？それ、全部出せってんだよ」

こいつら、俺の軍資金まで取る気か

低脳すぎて呆れたい所だが腹部に感じる痛みのせいで頭が働かない

「財布ごと出せや、アホが！」

そう言ってきた奴が俺の財布を奪うと複数人で俺を蹴り続けた

「悪い事をすると、こうなるんだよ。分かったか？」

ふざけんな、こいつら……

やばい、痛みで体が重い

「おい！」

痛みに支配された意識の中で聞こえた声の主は




四葉だった

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