- パチセブントップ
- コミュニティ
- パチ7自由帳トップ|ブログコミュニティ
- コラム(ブログ)詳細
太閤記(21世紀バージョン)
太閤記(21世紀バージョン)
-
ダストさん
- 投稿日:2021/10/22 09:19
寝室のクローゼットの片隅に、嫁には触れさせない自分の私物を入れる小箱があり、その一番下には7年前に購入したエロ漫画が今も眠っている。
お世話になったエロ漫画は、既に生身の女性と同等。簡単に別れられるはずもない。エロ漫画にすら、こんなに義理を果たすような俺である。人に惚れると直江兼続に惚れ込んだ前田慶次よりも手に負えないことになる。
俺が働いていた東京の中心部に、その街の景観には似つかわしくない大ホールがオープンしたのは、サラリーマン金太郎が猛威を奮っていたあの頃だった。土地柄もあり、朝一から勝負を賭けるお馬鹿さんが他の街よりも少なく、こんな俺でもそこそこいい思いをした記憶がある優しい店であった。
やがて4号機が終焉を迎え、JACゲームがなくなったパチスロに違和感を覚え、以前ほど夢中になれず五里霧中に陥っていた俺ではあるが、パチスロ雑誌は買い続けていた。
俺は、新台の情報や解析が載っているカラーページよりも、マニアックな企画や各ライターの個性が剥き出しになっている白黒ページをこよなく愛していた。
その時も、購入したのはパチスロ漫画でありながら、漫画は後回しにして大好きなライターの書いたページを読んでいたのだが…ページをめくる手が止まった。店の場所など全てイニシャルで書かれていたのだが、知っている人間にはわかる。そのライターの方が、あの店に訪れていたとは…。
俺にとってパチスロライター、特にこの方は神である。パチスロライター界のビートルズと言っても過言ではないそんな方が、俺の行きつけの店にいらっしゃっていたなんて…。しかも、俺のいない時に…。パチスロから足を遠ざけていた自らを激しく呪った。
その後、仕事終わりにまたその店に通うようになったのだが、一ヶ月後の雑誌でまたも俺の不在時にあの方が訪れていたことを知った。まじか…と肩を落とすとともに、次は必ずお会いできるよう、休日すらも出勤時と同じ電車に乗り、その店に通うようになった。
あの方は当時、プレイボーイにハマっていた。俺は、来る日も来る日もプレイボーイのシマを覗き、不在を確認して別の台を打つ。そんな毎日を過ごしていたのだが、気になることがあった。
…プレイボーイ、誰も打ってねえな。
このままだと、あの方が来る前に外されちゃうんじゃね?
ガメラ、オオガメラが大ヒットした後に期待の新台、しかもあのガメラにストックが!という触れ込みでデビューしたガメラハイグレードビジョンは滑り倒した。しかし、大抵の人が一度打った後期待ハズレという烙印を押したガメラハイグレードビジョンを、俺は打ちまくった。単なる物好きというわけではない。
もしもこのままガメラハイグレードビジョンが単なる産廃として店に認知されたら、開発者たちはどう思うか。きっと失敗を恐れ、新たなるガメラの開発に二の足を踏むことになるだろう。
店の方!ガメラはやれるんです!俺がこのガメラを育てますから、どうか次のガメラもよろしくお願いします!そんな意思表示をこめたつもりだった。ルパンには散々裏切られてきた俺だ。一回の失敗くらい、何とかしてやる。
ガメラハイグレードビジョンと同じ気持ちでプレイボーイを育てよう、そう思ってプレイボーイと戯れる日々を始めたのだが…あれ、この台純粋に面白いんじゃね、と早々に気付かされた。
プレイボーイの最大の魅力は気付くかどうかギリギリのラインを攻めた、違和感演出であると思う。
件のライターの方が言うように、重複率の高いブドウの次ゲーム、身体を後ろにそらし、台の全体を視界に入れる。違和感を一つ残らず察知するためだ。レバーを叩き、違和感がなく落胆しながらボタンを押すと外人の女の「ウッフーン」ボイス発生。ケツが浮く。
その他ブドウが揃わなくても、全くのばらけ目からのピキーン。何気なくレバーを叩くと右下のデジタルが動いたような…どこかが光ったような、からのピキーン。俺はプレイボーイに取り憑かれた。
自分の好きな台を文章にしたため、それを見た読者が同じようにその台を好きになる。
これこそが、真のライターの仕事であると思う。
その方は正に、真のライターであった。
「殿…ワラジは私の胸で温めておきました」
秀吉よろしくそんな思いでプレイボーイの基盤を温めていた俺は、いつしかその方の隣でプレイボーイを打つ妄想を始めていた。
あなたのために外されないように毎日打っていました。それからあなたのおかげでこの台を心の底から好きになることができました…あなたは…パチスロを嫌いになりかけていた私の心を救ってくれました。ありがとうございます。飲みに行きませんか。
その方もライターになる以前は、出会ったその日に憧れのライターを飲みに誘ったという。
そんなシチュエーションが訪れることを夢に見て、プレイボーイと戯れる毎日を送っていたあの日、ついにその方との遭遇を果たした。
その日は職場でトラブルがあり、いつもより大幅に店への到着が遅れた。
舌打ちしながら店の入り口を駆け抜け、全台開いているプレイボーイの真ん中をキープ。とりあえずトイレに向かったところ、ちょうどあの方が出てきた。
「いた…ほんとうに、いた…」
あんぐりと口を開け、数秒固まったのち、トイレを後回しにし、その方を追うと…。
プレイボーイ打たずに他の台打ってるしいいいいい!!
もしかしたらそれまでプレイボーイを打っていて、他の台に移動したのかどうかはわからない。しかしその瞬間、あれを話そう、これを話そうなどと、暖めていたプランは崩れ去った。
錯乱状態で突然後ろからその方の肩を叩き、「すいません、いつもあなたのためにプレイボーイを育てていました。飲みにいきましょう」なんて言った日にはコワモテのその方のこと、良くて目潰し、最悪生き埋めは覚悟せねばなるまい。
この千載一遇のチャンスを、残業のために逃すとは。本当に残念な星の下に生まれたのだな、と自分の運命を激しく呪いつつ、プレイボーイのレバーを叩いた。気がつけばその方はいなくなっており、神が哀れに思ったのか、その日のプレイボーイはわずか3時間足らずで二千枚のコインを吐き出してくれた。
閉店間際、店を出た。空に向かってため息を吐くと、透明な冬の空気を俺の呼吸が汚しているように、白く立ち上っていった。
悲しみを纏いながら帰宅し、似たもの同士だった秀吉のことをネットで調べたら驚くべき事実が判明した。
秀吉の誕生日は2月6日。
俺と同じ日だった。
14
ダストさんの
共有する
このコラムへのコメント(10 件)
読んで頂いてありがとうございます!
ピーワールドで我が街のドン2を調べたら全滅でした…(TT)
多分同世代です、自分もノーマル大好きなんで焼酎2ボトルくらいいっちゃうかもしれません。
読んで頂いてありがとうございます!
5号機の黎明期はプレイボーイやエヴァが支えてくれましたよね。あと、未だにアクアビーナスは5号機ベスト5に入ります。
あの違和感はたまらんね
読んで頂いてありがとうございます!
笑ってはいけないは、最初の温泉とハイスクールが好きすぎて、ブルーレイで持っています笑
自分はマテリアルガールは大好きです。
ライク@バージン
読んで頂いてありがとうございます!
確かにプレイボーイやジャグラーのガコ!はひいっとなりますよね笑
自分はプレイボーイにはまりすぎてブリトニースピアーズのCDを買ってしまいました
ビビリ体質はツラいっす…
読んで頂いてありがとうございます!
自分はコラムを投稿するときには読んで頂いた方に、「バカか、こいつは」と思ってもらえることを目標としております。
Alisaさんのコラムも読ませて頂きました。誠に勝手ながら、自分と同じ匂いを感じてしまいました笑
そして、プレイボーイ打ちたくなっちゃいましたw