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転生スロッター・ジャック【第三話】
転生スロッター・ジャック【第三話】
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ポリンキーさん
連れ打ち大好きなラッコ。 コラムも漫画も携帯に指でかいてます。 やさしくしてね! - 投稿日:2018/07/22 23:47
「はい!実戦終了です!いやー、かなり頑張ってくれてるお店でしたねー!」
「噂通り強かったですね、今日は…。で?まおみん収支は?」
「マイナス60Kでーす!ふざけんな!!」
都心の有名チェーン店前にて男女二人の演者が撮影をしているが、閉店間際ということもありギャラリーはちらほらとしかいない。
「ん?誰?」と言っているお客さんもいる。
「はい!オッケーです!お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様でーす!」
「お疲れ!まおみん!」
男性の中年演者が女性演者に話しかける。
「ショウゾウさん!お疲れ様です!いままでありがとうございました!」
男性演者に両手の指をぱっと広げながら握手を求める。
「やっぱり長年一緒にやってきたから淋しいよ~」
差し出された手を握り、縦にぶんぶんとふりながら眉をひそめる男性演者。
「とかいって新しいアシスタントの若い子可愛いから楽しみなんじゃないですか~?」
「まあね!」
「は?嘘でも否定しろよ!!」
握手した手に爪をたてる。
「いででででで!!いたい!いたい!うそうそ!」
「うへへへへ。思い知ったか…。まあわたしも30すぎてなにが『まおみん』だって話しですし、また編集や書き物の方に力を入れようかななんて思ってるんでタイミングよかったですけどね。」
「まだまだ若いよ。ていうか、誰かいい人いないわけ?おじさん既婚者じゃなかったら狙っちゃうくらいいい女なのに。」
普通のおじさんが言ったらただのセクハラだが、長年番組のパートナーとしてやってきた人からの言葉になぜだか少しうるっときた。
雨宮まおみ、通称まおみんはわりとベテランの演者、ライターだ。
もともと雑誌の編集者だったが、本人の露出が増え、次第に演者の仕事が多くなりフリーのタレントになって久しい。
知識量と歯に衣きせぬ発言で人気が出たが、多くのアイドル的なライターたちにおされ、最近は演者としての仕事も減っていた。
今日収録の「ショウゾウ☆ラボ」は演者になりたてのころからのCSレギュラー番組で、現在レギュラーとしてやっていた最後の番組であった。
しかし今日を最後に演者交代になる。
「そんな人いないですよー!わたしにはまだまだパチスロがお似合いってことっす!敬礼!」
といって敬礼したまおみに対し、古株ライターの塩野義ショウゾウはため息を一つ入れ、やさしいトーンで言った。
「まだ…わすれらんないのかい?師匠のこと…。」
「はっ…もっ、もういやだなぁ!!だからそんなんじゃないですし、どんだけ経ってると思うんすかぁ!しつこいしつこい!ばかぁー!もう!」
瞬きをせず、一瞬視線を上にあげたのち、顔をくしゃくしゃにして笑いながらまおみはまくしたてた。
「ごめんごめん。お約束みたいなもんだし!」
「それに」
まおみは笑顔のまま地面を見つめながら言った。
「あの人はもういないんだから。」
「四号機打ちたいなぁ、四号機打ちたい!!」
五号機も捨てたもんじゃないとか言っておきながら、ゲーセンにある機種もほぼほぼ五号機になっている昨今、純一(=丈二)は愛してやまなかった四号機たちを打ちたくて仕方なくなっていた。
12才の四号機おじさんである。
学校帰りにいける範囲のゲーセンの機種はほぼ打ちつくしてしまい、ホールにある最新台も打てないフラストレーションがたまっていた。
財布の中から1枚の名刺を出す。
「フリーライター…堀木ラッコ…あやしすぎんだよなあ。」
気になって貴重なネット使用可能時間を使い、調べてみると昔はパチスロ雑誌でライターみたいなことをしていたが、最近は地下アイドル、風俗、裏家業とあやしい記事をポツポツ書いてる三流ライターだということがわかった。
ただ、パチスロ業界とは繋がりがあるようだ。
わかっている。
誰も信じないとはいえ、自分が丈二の記憶を持っている以上近づくのは危険だと。
さらにこの怪しいライターは小学生に声をかけてくるようなやつだ。利用する気まんまんだろうし、このか弱い12才の体が危険にさらされる可能性だってある。
絶対に普通ならコンタクトを取るべきではない。
わかっている。
しかし。
打ちたいのだ。
四号機を。
1日考え、翌日の学校終わりに公衆電話から名刺の番号にかけた。
「お客様のご都合により、この電話はお繋ぎできません。」
「電話代払えやボケエエエエエエエ!!!!」
公衆電話を叩き切り、いつものゲーセンにむかった。
「よぉ」
ゲーセンで待ち伏せしていたのは、紛れもない、いま純一が電話をかけようとした本人、堀木ラッコである。
「…あれ?今日は逃げないんだな。」
「…さっき…。あんたに電話をかけた…。」
睨み付けながら純一は言った。
「あっ!あぴっ!!まじか!?ごめんごめん!つながらなかったろ?」
「つながんなかったね。」
「…ちょっとまって…。なんなのその貫禄は…。」
面倒なので純一はもう子供の振る舞いをするのをやめた。
「ま、まあいいや。電話してきたってことは興味あったってことよね?俺にね?ね?ね?」
「大方利用しようとしてんだろ?風俗ライターさんよ?いいよ。のってやるからいいとこってどこか教えろよ。」
「だからなにその貫禄。怖いんだけど。」
ラッコはマジで怯えた。
「まあパチスロうまい小学生がいるとかなんとかいってどっかに売り込むつもりだろ?構わないけど俺はさ、四号機打ちたいんだよ。」
およそ無邪気とは言えない笑顔で純一はラッコとの距離をつめながら話した。
「話が…うん。話が早いや…。いやまさにそんな感じでさ。取材してみないかって色んなとこに聞いて回ったんだけどさ。全然のってこなくて。」
「まあそうだろうな。」
「ただ一回見てみたいって人はいてさ、その打ってる姿を。だから今度スロ専ゲーセンに行こうってことなんだよね。」
「スロ専ゲーセン?」
「パチスロしかないゲーセン。まあホールじゃないけど一応18才未満禁止だから特別にね。四号機沢山アルゼ!」
「おお!それはいいな!!行くわ!行く行く!」
四号機が打てると聞き、警戒心もどこかへ行き、ややこしくなるかもしれないという危機感もまるでなくなってしまった。
古川丈二はほんとにパチスロが好きで、こうなると後先を考えない。そういう男だった。
「うん。とりあえず…。その取材とやらに付き合うかわりに条件がある。」
純一は咳払いをひとついれてからラッコに向けて話しはじめた。
「まず、俺の素性は教えないし、探らないこと。なんでスロットが打てるのか、打ちたいのか、」
「なんでそんなしゃべり方で貫禄があるのか、」
「そう。そういうの含め探らないこと!いいね?」
「あっはい。」
「あとは…。放課後に親に言い訳できるような用事を考えてほしい。」
「えっ?」
ラッコは今日一番驚いた顔をした。
「…なんだ?」
「いや、ちゃんと子供なんだな、よかったと思って。」
「ただの小学生だよ。」
嘘をつけ。ただの小学生なもんか。
と二人とも同時に思った。
「うん。もろもろ了解した。で、今日このあとその取材先にちょっと顔出すくらいの時間はあるだろ?」
ちらりと時計をみる純一。
「近いのか?」
「タクシーでワンメでいける。」
「…まあ…いいか。」
よし!とラッコは取材先に連絡をしようと携帯を取り出したが、止まっていたのを思い出し、折り畳んで無造作にカバンの中に投げ入れた。
実際にはワンメーターよりは遠かったが、つっこみをいれるほど遠くなかったため純一も何もいわなかった。
到着して降り、目の前のビルに入る。
「えっと5階だよな…。」
5階のフロア表示に目をやる。
「HETV…ホッパーエンプティーティービー…。」
純一…丈二にも聞き覚えのない会社だ。
「(ティービーって動画か??出れるわけねえだろ!!)」
色々思うこともあったが、とりあえず話だけ聞くか、とエレベーターに乗り込み、5階へむかう。
「今日行くっていってねえけど、社長いるだろな。暇だろうし。」
ますます不安になる発言だったが、とりあえずとりあえず。四号機打てるならと思い、黙っていた。
エレベーター到着後、受付で内線を入れる。
番組制作してるとは思えない殺風景な門構えだ。
「すぐ来るって。」
椅子に腰かけるよう手の動きでラッコに誘導され、純一もくたびれたその椅子に腰かけた。
直後。
ガヤガヤと数人が別の出口から出てきたが、純一は気に止めず時計を眺めていた。
「おっ。まおみんだ。」
ラッコのその言葉に反応し、純一はその出てきた人たちの方へ顔をむけた。
「!!…まおっ…!」
「ん?」
思わず純一の口から出た自分の名前らしき単語に雨宮まおみは無意識に返事をした。
「あれ?さすが有名人だな。知ってんだ。まおみんのこと。」
その呼び方は知らないが、知らないはずがない。
まおみだ。
年は明らかに重ねていたが、見間違うわけがない。
雨宮まおみ。
まおだ。
「あれ?純一くんだよね???」
呆けている純一に向かって突然話しかけてきたのは、これまた忘れるはずのない顔。
まおみの後ろから現れた男。
しかしこいつがなぜ俺のこと…。純一を知っているのだ!!?
「知り合い?じゅ…純一くんて言うんだ…。」
ラッコに言われ、思わずうなずいてしまった。
探られることなく素性がばれてしまった。
つづく。
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ポリンキーさんの
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このコラムへのコメント(6 件)
間延びしてきてるので終わりが見えなくなってきましたが…。頑張ります!
確かにそれはありますね。
そういう意味だとラッコは想像容易になってるのかなw
個人的な意見ですけど、ジャッくんだけは元々のキャラがはっきりしてる。
後はぼんやりというか、ハッキリとした人物じゃなくていいのかなと。
小説ってどんな人かなぁと想像するのが面白いと思うんですよ。
ラッコさんは名前がラッコだから仕方ないとしても(笑)
あ!あくまでも個人的な意見ですから!
いやこれね。芸能人っぽい名前で演者にいない名前、好きだった優木まおみさんからとったんですよ。
で、書いてて主人公に呼ばせたらそうなってしまい(笑)人間先生と絡める意図は全くなかったんすよ。
登場人物の見た目の設定とか考えてないんですが、挿し絵とかあったほうがいいのでしょうか。
そうかまおか!(2回)
いや~面白いなぁラッコさん。
驚くとあぴっ!ってなるんだ。
とりあえず次回までの間に1~4話読み直しておきます(笑)