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インタビュー・ウィズ・スロッター(稀にパチンカー)
2016.10.17
『岩手はホントにヌルかった』と彼は言った。パチ7編集長O氏の『キレイな道』とは?
チワッスあしのっす。さあ連載二発目。今回はパチ7の編集長、マスク姿でおなじみ「O氏」へのインタビューだ。夕方からガッツリ飲みながら佐々木真さんの話を聞いたあとだったんだけども、お陰様でたいぶ素というか、ノーガードの話が聞けた気がする。
俺、この方、性根はかなりカオス寄りの人だと思うんだけども、果たしでどうなんでしょうね。酒の勢いを借りて、その人間性に迫ってみましょう!
さあ、ひっ剥がすぜその心のマスク! ヒア・ウィー・万枚!
■ホッピー、モリモリ。
飲み会開始からすでに結構な時間が経過してた。
佐々木さんの話を聞きながらひたすらビールを煽り続けたO氏はすでにだいぶメーターが上がっている。
「ゲフゥ……。ンン? なに。僕のインタビューもすんの?」
「はい、どうせいつかお願いする事になるし、今お願いしちゃっていいですかね?」
「いいけども、つまんないよ」
「いや、そんな事ァないでしょう。なんか色々あんじゃないですか、エピソード」
「あるっちゃあるけどさぁ、僕、あんたらと違ってまっとうに生きてるしさぁ。あんまりパンチの効いた話は……」
あんたらとは、つまり俺と佐々木さんである。
まあ確かに、我々は……というかフリーランスで物書きなんぞやってる人間は総じて「その日暮らしのアウトロー」的な部分がある。一方O氏は上場企業のサラリーマンである。 比べるべくもない。
「あんたらドロ水の中を泳いでるけど、僕はキレイな道に居るからね。だからあんまり期待しないでね。あと設定推測するなら高設定にして欲しいな。僕上場企業だし」
「言っときますけど、これそのまま書きますからね。ごめんつっても知りませんよ」
「いいよ別に。書いちゃいなよ。編集するの僕だけどね。フヒーヒッヒ」
「クッ……。ハラ立つなぁ……。まあいいや。じゃあ、期待しないでお聞きしますけど、初めてパチスロ打ったのはいつです?」
すでに夜の帳が下りかけた浅草のホッピー通り。 ジョッキをテーブルに置くと、O氏は片膝を抱える形で語り始めた。
「二十歳の時かなぁ」
「何打ったんですか?」
「サンダーだね」(※メーシーの『サンダーV』の事)
「一人で?」
「いや、借金返さなきゃなんなくなってさー。友達がパチスロ儲かるぞって言ってたから、一緒に行ってみたの」
どこがキレイな道だよ! と喉元まで出かかった言葉を飲み込んで頷く。
「なんかね、バースデー打ち替えってサービスがあってさ。誕生日に行くと、設定を6にしてもらえるの。それ使って、友達に打って貰ったんだよね。絶対負けない! とか言ってたし。僕は隣で三千円だけ打ってみたんだけど、一瞬でお金なくなったよ」
「なるほど。友達はどうなったんです?」
「それが、負けたんだよね」
「ありゃ。借金返せないですね」
「うん。友達『ごめん』って言ってたねぇ」
「折角の誕生日打ち替えなのに……。残念でしたねぇ」
「まあそいつの誕生日だったんだけどね……」
「──え?」
「いや、友達の誕生日だったんだよ」
「友達の誕生日に、友達に打たせたんですか?」
「そうだね」
「え、ちょっと待ってください。理解が追いつかないです。それで友達が負けて、友達が『ごめん』つってたんですか?」
「そうだね!」
「……どんなデビューだよ!」
初めて打ったパチスロは何?
いままで100人くらいにこの質問を投げかけて色々な答えを貰ったけども、こんな意味の分からない初打ちの話を聞いたのは初めてだった。 いったいこの人、どんな人なんだ……?
もうちょっと過去から掘り返してみよう。
左がパチ7編集長
■子供時代
「Oさんそもそも、子供の頃はどんな感じだったんですか?」
「ゲーム好きだったねー。ドラクエとか超やってた。あとは水族館が好きだったね」
「お。水族館。いいですね。詳しく聞かせてください」
「──子供の頃、神戸の水族館に行って、そこで生まれて初めてジンベイザメを見たんだけど、それで一発で好きになったんだ。すごい衝撃だったよ。もうね、ほんとに衝撃。あ、絶対衝激だね。アリストクラートの。僕あれ打ったことないけど」
「別に無理やりスロネタ入れなくていいですよ……」
向かい側で聴いてた佐々木さんが頷く。
「いいですね水族館。俺は『ハタタテハゼ』が好きです」
「あー。さすが佐々木さん。いいですよねハタタテハゼ。かわいいなぁ」
ハタタテハゼについて俄然盛り上がり始めるオッサン二名。 俺だけが蚊帳の外だ。 素直に「ハタタテハゼってどんな魚なんですか?」と尋ねると、佐々木さんが緑茶ハイを片手にちょっと考えてこう言った。
これがぁハタタテハゼェ!
「目がね、ドンちゃんみたいなの」
「だから、無理やりスロネタぶち込まなくていいですってば……。編集長、今でも水族館は好きなんですか?」
「そりゃ好きだよ。水族館で働きたくて、大学も水産学部に行ったくらいだもん」
「え、そうなんですか。意外。政治とか経済のイメージでした。大学どこです?」
「岩手だったねぇ」
「じゃあさっきのサンダーのホールも岩手ですか?」
「そうだよ。ヌルかったよ岩手は」
「ヌルかったって、スロがですか?」
「もちろん。大学通いながら50くらい勝ってたね、毎月」
「あれ。サンダー事件でスロ辞めなかったんですね」
「辞めなかったね。不思議な事に。そもそも僕、ギャンブル嫌いなんだけどね」
「え? どういう事です?」
聞けば、編集長のお父様は株で酷くやられていたらしい。
そのお陰か、O氏は幼き頃より母上から「ギャンブルはクソだ」という訓戒を受けて育ったそうなのだ。
「まあ佐々木さんじゃないけど、僕も代ゼミに行っててさ」
「でた、名門パチンコ大学!」
「当時はまだモーニングがあって、周りの連中はみんな小遣い稼いでるのね。それ見ながら僕、いやーほんとにこの世界はクズばかりだなと思ってたよ」
「ほぇぇ。染まんなかったんですか。真面目だったんですね」
「そりゃあ真面目だよ。僕、あたま良いしさ。悪いことも全然しなかったよ。タバコとか吸ったこともなかったね」
「今ガンガン吸いながら話してますけどもね。薄汚れましたね」
■スロとのランデブー
反ギャンブルの英才教育を受けて育った水族館好きのO氏は、謎の「友達の誕生日にサンダーを打たせて負ける事件」を経て、どういうわけだかアレほど忌避していたギャンブルに目覚める事になったらしい。
「なんでまた、本格的にスロり始めたんですか?」
「一言でいうと、悔しかったんだよね」
「サンダー事件ですよね?」
「そう。あれさ、友達がすごい勢いで絶対勝てる! って言ってたし、周りに聞いてもどうも『たまたま負けた』みたいな感じだったらしいのが分かってさ。やっぱ納得行かないから、もう自分で打ってみようと思ったんだよ。それでプレステの『アルゼ王国』を買って練習して、ホールデビューしたの」
「負けず嫌いなんですね」
「負けるのは嫌いだねぇ」
「勝ちましたか?」
「うん。ワードオブライツで12,000枚出た時、ああもうこれ勝ったなと。むくわれたよ。アルゼ王国の努力が。そして岩手楽勝だなと」
「岩手関係ないと思いますけど、学生に万枚はヤバイっすね」
「うん。当時コンビニで深夜のバイトしてたけど、これはビビった。同じだけ稼ぐのに今の時給でどれだけ働けばいいんだろうって計算して、またビビってさ」
「金銭感覚おかしくなりますよね」
「そうだよ。当時ほんとお金なくてさ。週6で晩御飯がレトルトカレーだったのに。まず食生活が一変したね──」
深夜のコンビニバイトという単語が出る時点で、どうも編集長は清貧というか、苦学生側の立ち位置だったらしいのが分かる。そんなレトルトカレーばっかり食べてる貧乏学生の目の前に降って沸いた濡れ手に粟の大金。これは幼き頃よりの反ギャンブル英才教育を打ち砕くのに、十分な破壊力があったはずだ。
「岩手は本当にヌルかったなぁ」
「そんなヌルかったんすか」
「ヌルかったよ。僕、週に1回か2回しか行ってなかったんだよ。それで50以上いってたからね。ほんと、毎回のように6打ててたもん」
「いやーそれ結構すごいですよ。毎度ツモっててもなかなか50は行かないと思います」
「まあね。デフォのパフォーマンス高いからね僕。二重まぶただし」
「二重……。ええと、当時、メインで打ってたのは何でした?」
「ホロQ(※オリンピアの『ホットロッドクイーン』の事)とハナビかなぁ」
「出た、ハナビ。俺は『アルゼ王国』でハナビの練習してスロに突撃しましたね」
「あしのくんいくつだっけ」
「37っす」
「あ、あんま変わらないね。まあ似たようなスロ遍歴なるか」
サンダーでデビュー。ワードオブライツで爆裂し、ホロQとハナビで伸ばす。 当時を知るスロッターならば、誰しも納得の歴史だと思う。
問題は大学に通いながら週一か二の稼働で50オーバーの黒字を叩き出してた点だ。 普通、この状態を経験すれば世間をナメて当然である。 つまりは就活なんか、しないに決まってるのだ。
「……編集長、そのままスロプロの道に行こうとはしなかったんですか?」
「それは無かったね。性格的にね。パチスロはパチスロ! って分けてたから、素直にレールに乗ったよ。ほんとまっとうだから。僕。キレイな道歩いてるからねェ」
「ぬおお、何かすげーチクチク痛い……」
「四社目で今の会社(※パチセブン運営会社)に入ったけど、よく考えたら結局パチスロが仕事になってるんだけどさ」
「今でも打ってますか? スロ」
「いやー減った。特に子供が出来てからは激減だね。CR赤ちゃんに敵うものなし」
「あ、ちょっと好感度上げようとしてますね──」
と、ここで俺は一旦便所に行った。 しっこしながら今までの会話を反芻する。
──子供ができたらスロ激減。
そうか、編集長は編集長である前に、家庭をもつ一人の人間なのだ。 マスク被ってホール回って調査してるのはまさしく仮の姿で、本来の氏は善良な父なのである。
話を聞く限り、氏はスロと一定の距離を保ちながらも、氏のいう所の「レール」に「スロ業界」を選んでいる。
大学時代──言い換えるなら青春時代に感じた昂奮や感動を、あるいはその残滓を、しっかり人生の中に取り込んだまま現在に至っているのだ。あえてギャンブルやスロと一線を引くような態度や言動と裏腹に、氏はちゃっかり、スロを愛しているのである。 その氏が、スロの頻度を減らすほど、どうやらCR赤ちゃんは面白い台らしい。 なんとなく、氏の人柄の一端を見た気分になって、筆者は便所を終え、そして手を洗って戻ってくると、なんか知らんがこんなんなってた。
後ろの席の韓流スター風の若者に、楽しそうに絡む編集長。
「僕が写真とってあげるよ! ほら! ポーズ!」
「ウェーイ」
「よっしゃ。連射だ! 連射! バシバシバシバシ」
「ちょ、連射! 連射! お兄さんウケる!」
「ほら、撮ってる撮ってる。ゲラゲラゲラ」
何やってんだこの人……!
ちょっといい話が台無しである。
「編集長。編集長。もうそっちの韓流スターいいから。はい、シメますよインタビュー」
「え、なに。まだやんの? もういいじゃん」
「良くないっすよ。大事な話が残ってますから。パチ7っすよ。今更ですけど、パチ7をどうして行きたいですか?」
■最終質問
「ちょっと。酔ってる時にそれ聞くゥ? ンー。そうだねぇ。やっぱりパチンコとかパチスロが楽しくなるサイト、ってのが目標だよね」
「漠然としてますね」
「攻略とかはもう別のサイトいっぱいあるわけじゃん。ウチはそうじゃなくて、パチンコとかパチスロそのものを愛してる人に向けて、それがもっと楽しくなるような場所を提供したいなってのはずっとある」
「あー。自由帳とか見て思ったんですけど、たしかにその側面はガッツリありますね」
「なんかさー、もう、勝利至上主義みたいな所あんじゃん。パチスロ。僕も大学時代はそうだったけど、あれは岩手がヌルかったから良かったんだよ。今の時代の大学生とかが勝とうと思ったら、大変だからさ。なので、そうなっちゃうのは仕方ないと思うんだけどもね。でもそうじゃないだろうと。もっと色々、パチンコとかパチスロの楽しみ方ってあるんじゃないの? ってのを、提示出来たらいいなーと思うね」
「今のところうまく行ってます?」
「どうだろうね。それこそみんなに聞いてみないと。そう。みんな、なんだよね。ユーザーとかファンとかを巻き込んでさァ、一緒に楽しく作り上げる、ってのが理想だね」
「さっきの韓流スターみたいな兄ちゃんも巻き込んでましたねぇ」
ビールを煽って一息。 タバコに火を付けながら、編集長はフゥ、と息を吐いた。
「でも僕、ぶっちゃけあんまり編集長向いてないと思うんだよね。どっちかっていうとみんなとワイワイやる側の人間だからさ。だから、僕より立派な人間が出てきたら変わって貰いたいなってのはずっとある」
夜の帳が落ちた浅草の空気に、紫の煙が溶けた。
「なるほどね。わかりました。じゃあ最後に質問」
「なに?」
「生まれ変わったら、またパチスロ打ちますか?」
「……そうだねぇ」
ちょっと考えてから、氏は真顔でこういった。
「打つんじゃない? たぶんね」
「オーケー! 以上です! ありがとうございました!!」
■推測開始
さて、材料は揃った。それでは人生設定の推測に入ろう。
なるほどなー。こういう人だったか、編集長。なるほどなるほど……。
これ、一見高設定っぽい挙動は示してると思うんだけども、だいぶヒキに助けられてる気がする。でもなー、なんだかんだパチ7をここまで育ててるし、地力は絶対に強い。レールとか安定感って単語を結構頻繁に使ってらっしゃったし、間違いなく偶数だなぁこれは。
学生の頃真面目にコツコツやってたのが今になって開花してるのが、途中スロで捻じ曲げられてる感じもあるけど、どうなんだろうな。難しいなこれ。
うーん。あー……。よし。決めた。
O編集長の人生設定はこちら! 設定2のサンダーV。誕生日打ち替えサービス利用可能!
ただし隣の台は釘ガチガチのCR赤ちゃんとする。 ああ気になってサンダー打てない。
以上! 編集長、佐々木真さん! ありがとうございました!
次回は俺の友達の「アキバのまこさん(フリーライター)」の人生設定を推測してみよう。
シーユーネクスト万枚! チャオ!
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- あしの
- 代表作:インタビュー・ウィズ・スロッター(稀にパチンカー)
あしのマスクの中の人。インタビューウィズスロッター連載中。元『セブンラッシュ』『ニコナナ』『ギャンブルジャーナル』ライター。今は『ナナテイ』『ななプレス』でも書いてます。
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