究極のオカルトを求めて。その３

究極のオカルトを求めて。その３
「美輪明宏待受打法を検証」

それは、遡ること二年と数ヶ月前。
２０１３年、暮れの出来事である。
俺は足立区某所にある電器屋にて勤務しはじめたばかりの、ピカピカのルーキーだった。
楽しい仲間たちに囲まれて、日々新しい事を覚えたり、怒ったり、笑ったりしてお給料を貰っていたのだけども、勤務し始めて数週間ですっかり同僚たちと打ち解ける事が出来たのは、ひとえに「パチスロ」の存在がデカい。
そう。周りがほぼ全員、スロッターだったのである。

此処をご覧の諸兄にも覚えがあると思うけども、初めて会う人がスロッター（あるいはパチンカー）であると知った時の安心感はちょっと筆舌に尽くしがたいものがある。
スロッター同士、共通の話題には事欠かないし、なによりギャンブルにまつわる趣味で身持ちを崩したクズ同士のシンパシーというか、ダメ人間の共通項で括られる者の互助会的なノリで、何を置いてもとりあえず一瞬で「味方」になるのだ。

例えばその店には「マッキー」という男がいた。
最初は俺の直属の教官みたいな奴だったのだが、もはや俺、はじめに挨拶した瞬間から彼のことが嫌いだった。
元から慣れない接客業だったのが、マッキーのおかげで輪をかけて嫌になった。
最初の二週間くらいは彼のおかげで超辞めたかった。
とりあえず辞める時は一回頭突きしてヨロめかせた後、立膝に足をかけてシャイニングウィザードでも決めてからにしようと思ってたほどである。
だがある時、ふとしたキッカケで彼が「パチンカー」である事を知った。
しかも慶次で二万発出した後、「なんか調子いいからもっと出る気がする」という理由で全然回んない台をそのまま続行し、全部飲ませて吉牛食って帰ったとかいう伝説まであるクラスの、わりとダメなパチンカーだった。

それまで「○○さん」と呼んでたのが、その日を堺に「マッキー」になった。
あっちはずっと敬語。

「おいマッキー。パチンコの調子どう？　最近行ってる？」
「いやー、勝てませんねぇ」
「回わんねー台ばっか打つからだよ」
「回る台とかあるんですかねぇ……」
「知らねぇよ。まあ頑張れ。しゃせー」
「しゃせー」

立場逆転である。
それもこれもパチンコ・パチスロのおかげだ。
もし俺がパチもスロも打ったことが無かったら。あるいはマッキーがそうだったら、俺は彼に対してずっと苦手意識を持っていただろう。

さて。

店に「銀二さん」という人がいた。
未だに懇意にしてる人の良いオッサンなのだが、ある時、ニヤニヤしながら俺に携帯の画面を見せてきた事がある。
なんかクダらねぇエロ画像かなんかだろうなと思ってその手の内を見やると、そこには女装した金ピカのオヤジが鎮座ます待受画像があった。

「……ん。なんすかコレ」
「マックス知らねぇの？　美輪明宏だよ」
「美輪明宏……。ヨイトマケの歌の人ですっけ」
「そう。スピリチュアルの人」
「ゲイなんすよね」
「だな」
「……で、これが何か」
「え。マックスまじで知らねぇのか。これ今流行ってるんだよ」
「美輪さんが？　なんでまた……」
「金運アップのお守りだよ。この画像には魔力があって、待受にすると何か知らねぇがジャグ連すんだよ」
「えー……。いやぁ流石にそれは……」
「マジだよ。あ、ちょうどいい所にオカティスいんじゃん……。おーいオカティス」

呼ばれて来たのは足立区のオナ禁名誉会長、あるいは足立区のファッションモンスターことオカティスさんだ。
この辺のエピソードは掘り返せば無限に出て来るので割愛。
詳しくはブログ参照だ。

「なに？　どうしたの二人して」
「マックスがさー。美輪さんの威力知らねーんだってさ」
「へー。マックスさん遅れてるね。今みんな三輪明宏だよ」
「うそん！　マジで？」
「マジだよ。ほら、俺のケータイも……」

見せられた携帯の待受画像は、確かに三輪明宏だった。

「げえ。マジかよ……。てことは、ワタヤミーも、タナトスさんも？」
「うん。みんな三輪さん」
「マッキーも？」
「マッキーはドラえもんにしてる」
「マッキー以外全員三輪明宏……」

絶句する俺に、銀二さんとオカティスさんが詰め寄る。

「マックスも三輪明宏にしようぜ」
「うん。もっと三輪明宏をリスペクトした方がいいよ！」
「い、いやだよそんな女装のオッサンの待受……！」

結局、俺はついぞ三輪明宏の待受を利用する事はなく。
２０１３年、１４年、１５年と連続で年間収支はマイナスを叩いている。

──この画像には魔力があって、待受にすると何か知らねぇがジャグ連すんだよ。

俺の耳には、あの時の銀二さんの言葉が、未だに残っているのだ。

●ついに手を出した。

というわけで、今回のネタは「三輪明宏待受打法」だ。
オカルトにはいろんな種類があって、アプローチの仕方でカテゴライズ可能になっていると思う。
初回にネタにした「鍵穴クリクリ職人」の婆様は「行動」からアプローチする系のオカルトだが、今回のは「お守り」とか「神頼み」に近い、「願掛け」オカルトの一種だろう。
てかまず実際に流行ってたのかどうかを検証してみたが、ネットで検索するとまー出てくる出てくる。
調べ始めて５分くらいで「それがガチのブームだった」事が分かった。
しかもビビる事に、未だに実践者が多いらしい。
実は調べるまで銀二さん発案のネタかと思ってたのだけどもなんのなんの、何気に由緒正しき（？）オカルトだったのである。
ただ、これはあくまで「金運アップ」のお守りの側面が強く、決してジャグ連率アップに限定した話じゃあないとの事。
そりゃそうだろう。
どんだけ狭い効果範囲なんだっつう話だ。
まあ、ギャンブル運も広義の金運には違いないけどもさ。

で、それまでの俺の壁紙はこれ。

いい歳ぶちコイたオッサンのメニューアイコン４つの中の３つがゲームってのがもうクソすぎて終わってるレベルなんだがそこは置いといて。
ご存知クロエ・モレッツちゃんだ。
そこはかとなくオシャンティ。
見るたびに癒やされる一枚だよ。
あー可愛い。なでくり回したい。
んでこれが今回のオカルトではこうなる。

ズドーン。
自分の携帯の事が一発で嫌いになる素敵壁紙だ。
別に美輪明宏が嫌いなんじゃなくて、金ピカが腹立つ。
でも確かにゴージャス。
金運上がりそうなのは間違いない。
あとはコレで実戦にいけばオカルト記事の出来上がりなんだが、果たして何を打つか。
せっかくなのでもうちょっと美輪明宏さんについて調べてみた。
んで調べた結果、とある事実が判明した。
彼（？）は自分の事を「天草四郎時貞」の生まれ変わりつって公言してるらしい。

へぇ。（無感動）

じゃあまあそれに乗っかってみようか。
天草四郎時貞といえばご存知「キリシタン大名」だ。
知名度はスゲー高い。
未だに謎多き薄幸の美少年……みたいなイメージだけども、まーありとあらゆるエンタメ作品でキャラ化されてますね。
キャラ化されまくるというのはやっぱエンタメと相性の良いキーワードが揃ってるからでして、とりあえず羅列すると……。

・キリシタン大名
・美少年、あるいは美少女
・天才
・奇跡を起こせた
・洋風のシャツを着用（襟は立ててる）

こんな感じ。
個人的には性別不詳で襞襟のシャツを着用というところがグッとくる。
んでもうこれみた瞬間に今回の対戦相手は決まった。

『デビルマン3 悪魔ノ黙示録』だ。
どう考えても上記の特徴はデビルマンに出てくる「飛鳥了（サタン）」だし。
これはもう美輪明宏と対戦させるしかねぇ。

現世vs前世だ。現世vs前世。
よっしゃ行くドン！

●イケイケ現世。

というか個人的には今作のデビルマン、かなり面白いと思う。
もちろん批判も多い。
システムはホントクソだと思う。
ただ、原作リスペクトがすごい。
アニメじゃなくて漫画のほうへの。
前作も凄かったけども、今作はそれを超えてる。
だれがドス六のセリフ演出を使いますか。今のスロで。
この辺の作品愛とかは個人的に版権モノの台を評価する上での最重要ポイントなんで、多少システムがイカれてようが目をつぶらざるをえない。
なのでちょいちょい打ってるんだけども、未だに爆裂経験は無し。
あまりに出なさすぎて原作がちょっと嫌いになりそうな勢いなのだが、大丈夫。今日は美輪明宏が俺に付いてる。
いけ！　現世！　頑張れ！！

投資四本目。
ＣＺ非経由でなんか知らんが当たり──。

９連目で前世登場。
しかもバトル中にボナ引いてストックもらい！
うおお、現世つええ！
美輪さん効果あるのか！？

１０連目も前世。
しかもサラッと勝利してもういっちょストックあざす！
ちょっとまてコレもしかして──！

もはや３０連とかまで行ってる件。
えー……と、エンディングの条件って１６連だったような……。
もしかして、これ見れちゃうのか？
あの名シーンがとうとう降臨するのか？
てかボコボコじゃん前世！
前世弱えぇ！
ザマァッ！

エンディング前世バトル。
うおおお……。
これ感動するわ。
ホント原作通り。
すごいよこれは。
てか見る度思うけど、飛鳥くんにちゃんとパイオツあるのが素晴らしい。
実写クソ映画のクソデビルマン撮ったクソ監督にエレコの開発者様の爪のアカをゴリゴリに煎じて無理くり飲ませたい。そして「美味しかったです」って１００回言わせたい。

ラストシーン手前。
眠ったのかい、アキラ、のところだ。
このシーンホント好き。
これねー、原作未読の人にはわかり辛いだろうけども、アキラくん胸から下吹っ飛んで死んでるから。
あ、アキラくんってのは美輪さんの前世の隣にいるゴンブト眉のもみあげ野郎の事なんだけども、まあ雑魚だよ。飛鳥キュン最高！！！

はい来た！
感動のラスト！
ほぼ完全に女体化した飛鳥キュンがもみあげ野郎を失った悲しみで泣き崩れる中、天使の群れが飛鳥キュンを殺しに来ましたよ！
どうなっちゃうの！？　飛鳥キュン！
続きはバイオレンスジャックを御覧ください！（意味わからんけど）
イエーイ！
しっかし、これ壮絶だよなァ！！
マンガ史上に残る最強のシーンだと思うよコレ！！
いやーー嬉しい。
まさかパチスロで見れるとはなぁ！
てかラストシーンのこの金ピカ、三輪明宏の待受にクリソツじゃんね！
金色ってやっぱ偉大だわ！

●総括

結果、投資４ｋに対して回収が１１ｋ。
あ、いい忘れてたけど５スロな。
いやー勝った勝った。
サンキュー美輪明宏。
なにがどうなってアレか知らんが、やっぱ風水的にも金色とか黄色って金運を司るらしいし。なんかもしかしたらあるのかもしれん。
ちなみに風水についてもちょっと調べたが、金色のパワーを最大限活かすのには「金色を使いすぎてはいけない」らしい。
ちょっと分かり辛いかもしれんが、つまり「金色を一箇所にだけ使う」のが良いとの事。
そういう意味ではこの日の俺の装備は白のスキニーパンツに白ボーダーシャツ。アウターは黒のカーディガンでクックも黒スニーカーという見事なまでのモノトーン装備で、金色やら黄色は「三輪明宏の待受」以外一切身につけていなかった。
そういう意味では美輪さんのパワーを最大限に活かせる状況が奇しくも完成していた事になる。
実際に発動した美輪さんパワーは、確かにイカれていた。
『デビルマン3 悪魔ノ黙示録』最大のダメポインツは「全然勝てる気がしない黙示録バトルにあると思うのだけども、この日のバトルは神の見えざる手の介在を確信するレベルでヒキがおかしく、「デビルマン攻撃アイコン」の時にのみモリモリとベルを引き、「敵攻撃アイコン」の時にはリプレイ或いはレア小役がガンガン来まくっておりまして。
もう二度とこの勢いは再現できねぇと思うけども、いやー恐るべしだよ。三輪明宏。

というわけで一発目の検証実戦の結果だ。
「美輪明宏待受打法」は「効果アリ」。
しかもその効果は「気持ち悪いレベル」だった。

すげーなオカルト。
今まで馬鹿にしててゴメン、とか思ったよ！
というわけで次回の検証は「陰毛お守り打法」だ。
ちょっとエロいのにする予定なり。
以下、来週！
シー・ユー・ネクスト・万枚！
アディオス！

8