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ずっと美味しく酒を飲み続けていたいので、健康には気を使っている。酒の量は週にいいちこ一升を２本強。それを何年も続けているのだが、γGTPは20前後を保っている。10年ほど続けているランニングの効果が出ているのだろうか。

決まったコースをその日のスケジュール次第で早朝に走ったり夕方に走ったりしていると、時間帯によりいつも出会う人たちがいて、こっそりと心の中であだ名をつけている。

昼下がり、豪邸で庭木を愛でている貴婦人には「骨川」、日中アパートの駐車場でひたすら族車と思しき単車を手入れしているリーゼントには「武丸君」、早朝まだバスの来ることのない時間に停留所のベンチに座り、ひたすらタバコをふかし続ける白髪の老人には「マッドサイエンティスト」と名付けた。
骨川さんはやっぱり語尾に「ザマス」とつけるのかな、などと考えながら走ると辛いランニングも少しは楽しくなるのだが、ある時ふと思った。
あの頃、俺はパチンコ屋の店員になんと呼ばれていたのだろうか、と。

かつて俺は、一年中ほぼ毎日パチンコの初代ルパン三世を打ち続けていた。
朝から特攻をかける日もあったし、モンスターハウスでやられた後、傷を癒すためにルパンに辿り着いた日もあった。
どんな形であれ、必ずルパンと戯れていた俺に、店員はどんなあだ名をつけていたのだろう。
出来れば「ルパン四世」など、ルパンに関する名を付けてくれていればありがたい。もしも、街で偶然出会うことがあれば、ぜひ聞いてみたいものだ。

パチンコ史上、最強の予告は「魚群」だろう。ギンパラが登場し30年近く経った今も人々を熱狂させている名演出であるが、俺は全てのパチンコ台の中で海モードの、昔ながらの魚群が一番気持ちよく感じる。
「クズぱち」で鈴木もぐらさんが必ず海モードでプレイしているのを見て、やはりこの人はわかっている、といつも感心する。
リーチがかかり、右から魚群が流れるあのタイミング、あの瞬間こそが地球上でもっとも尊い数秒間である。

しかし、それに匹敵する予告がある。それが、ルパンの不二子予告だ。

ヘリの音が鳴る。この音が非常に良く出来ている。ハマっている時のヘリ音は脳をほどよく刺激し、救世主が来た！と思わせる。
そして、運が良ければ不二子登場となり、そのパンツの色次第で信頼度は魚群と同等となるのだが、この「パンツの色が判別できる一瞬」の尊さは、唯一魚群と肩を並べることができるほど、貴重な時間だと思うのだ。
なぜ平和はこの最強予告をみすみす手放したのか、理解に苦しむ。これをずっと採用し続けていれば、パチンコのジャグラーが海ならばニューパルはルパン、それくらいのポジションは容易に得ることができたはずだ。

そんなことを考えていたら、今すぐルパンを打ちたい、打たなきゃ死ぬ。そんな思いが脳を支配した。
俺はすぐさま電車に飛び乗り巣鴨へ向かった。

詳しい方ならご存知だと思うが、巣鴨には「RISE」という俺が国会議員であれば即座に指定文化財にしようと思えるぐらいの、国宝級のレトロ台が並ぶスロゲーセンがある。

そのうちの一台に「ルパンX」があった。
個人的には現金機のVが好みなのだが、演出面は全て同じだ。入店後、一直線にルパンへと走った。

ハンドルを握り、玉を打ち出す。チャッカーに玉が吸い込まれていくと、懐かしいあのメロディが流れた。

てろろろん♩てろろろん♩

はっきり言って、泣いた。

これだよこれ。

一瞬で俺はあの頃にタイムスリップしていた。
すべりやヘリからの不二子、フィアット転倒からの銭形出現のタイミングなど、DNAレベルで刷り込まれているのか、全て身体が覚えていた。

初当たりは五右衛門スーパーで4図柄当たり、再抽選で確変と王道の展開で3連、さらに浅い回転数での次元スーパーで確変引き戻しに成功したところで時間切れとなったが、本当に幸せな2時間だった。

しかし、欲望を満たし、帰りの車窓から日暮里の街並みを眺めているあたりで唐突な賢者タイムが俺を襲った。

楽しかった。本当に楽しかったのだが。

これ、当時ホールで打っているのと同じくらいの楽しさではなかったよな。

それは何故だろう。

パチ7に下ネタは厳禁だと思うのでオブラートに包んだ表現をするが、いわゆるオメックスの際に「前戯」は非常に重要だ。

パチンコでは、この「前戯」がサンドに現金を投入、貸玉ボタンを押すことに値する。大事な大事なお金がなくなっていくという恐怖感、いわばスリルがパチンコを何倍も面白くさせていると思う。

その点で、パチンコ1玉4円、スロット1枚20円と決めた人は、人類で初めてあのグロテスクなウニを食った人と同じくらい偉大だと感じる。

絶妙だ。

俺のような庶民にとって、パチンコではボタンを押すたびに500円、スロットでは1000円が失われていくスリル、ものすごく勝っても20万、死ぬほど負けても10万というラインが本当に絶妙なのだ。

芸能界でパチンコ好き、といえば和田アキコさんが思い浮かぶが、和田さんが確変を引いた喜びと俺のそれでは俺の方が50倍上回る、そんな自信がある。
和田さんは10万負けても台を破壊するだけだが、俺は明日からの暮らしに頭を抱えることになる。その恐怖心こそが、大当たりの快感を何十倍にも増幅させるのだ。

こんなに楽しくて、しかもたまにお金が増える遊びが他にあるだろうか。

断言しよう。

ない。

やはりパチンコこそ、真のアミューズメントだ。

そう確信した俺は、ふと我に返り思った。

きっと、こんな俺のことを、パチンコ屋の店員は「養分」と呼んでいたんだろうな、と。

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