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俺と戦慄

★機種に関する話 | コラム

俺と戦慄

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たれめさん
ストップボタン押すために仕事してる
投稿日:2017/03/26 21:46

2017年某日。俺は再び池袋の地に降り立った。



久方ぶりに訪れたその街は相も変わらぬ喧騒に溢れ、若者のやり場の無いエネルギーを必死で押し込めようとしているかのようだった。釣られて逸る気持ちを必死に抑え、今一度目標を見定める。



電車で片道二時間半。掛けた時間に対する目的を人に話せば、頭がおかしいのではないかと奇異の目で見られることだろう。それでも、正義は我にありと自らを奮い立たせ歩みを進める。向かう先は勿論、緑の豆のあの店だ。



標的は定まっている。種銭も十二分に用意した。あとは勇気だけだ。闘いは既に始まっている。喰うか、喰われるか。戦場の掟は何時だってシンプルである。遂に雌雄を決する時が来たのだと心が高ぶる。




決して退くわけにはいかない闘いが今始まる。





戦慄:恐ろしさの余り、震え慄くこと。
その恐怖を名に冠したパチスロが存在する。『戦慄』。今は亡きパチスロメーカー「エール」が参入第1作目として送り込んだ名機だ。……恐らく名機だ。251枚払い出しのボーナスを搭載し、一枚役が当選すると突入する10GのRTがチャンスを演出する。


現在では全国で1店舗、グリンピース池袋東口店にのみ設置されており、名実ともに絶滅危惧種となっている。



店舗に着き、先ずは店内を見て回る。休日ということもあり、中々の盛況ぶりだ。我が愛しのPLAYBOYも、今日は他の男の相手が忙しいようだ。それもしょうがない。魅力的な君は引く手数多だ。手が空いた時に構ってくれればそれでいい。そっと別れを告げ、徘徊を続ける。そして、運命の刻は訪れる。『戦慄』はフロアの最深でひっそりと、しかし確実にその存在感を放ちながら、俺を待ち構えていた。



正直、空いていなければいいと思っていた。空いてさえいなければ適当に理由をつけて他の台を打つこともできた。しかし、空台として静かに牙を磨ぐ『戦慄』と、はっきりと眼を合わせてしまった。闘いにおいて、互いを認識した上で自ら眼をそらすことは、敗北を認めることを意味する。覚悟を決めて着席する。



メダルを借り、打ち始める。液晶にはおどろおどろしいホテルの廊下が映し出されており、上部の役物も含め全体から不気味さを放っている。当たりは早く、二千円で来た。ボーナス中はホラー映画のようなストーリーが展開される。折角だからと鑑賞していたのだが、いかんせん隣のゼットゴールドEXの音が大きくてナレーションが良く聴き取れない。注意深く耳を傾けていると、一つの疑問が生まれた。



ナレーションの声……神谷浩史じゃないか?



化物語の阿良々木暦、マクロスFのミハエル・ブランとパチスロにも数多く出演している人気声優がなぜ『戦慄』に?


音が小さく、明確には聴き取れなかったが、一度そう聴こえてしまうとそうとしか聴こえなくなってくる。本筋と大きくかけ離れた疑問を抱きながら消化する羽目になったボーナスは、ピエロからの「ぼくを見つけられたかな?」という問いかけで幕を閉じた。



ピエロと言っても、ペカッと光れば大当たりでお馴染みの愛くるしい感じではない。もっと毒々しい、強烈な闇を抱えているタイプのピエロだ。そんなピエロがボーナス中のストーリーの中に隠れているらしい。




知らん。誰だお前は。お前が出てくる事は疎かお前の存在すら知らなかったわ。探させるのにその存在を最後に告知するって斬新を通り越して困惑だわ。そもそも何でピエロなんだ。ストーリーに全く関係なかっただろ。



若干の消化不良を抱えながらも、黙々と打ち続ける。10枚役の落ちが良く、RTにチョコチョコと入るため、特に気が滅入る事もなく二時間ほど打ち切ることとなった。



そろそろ止めるか。そう思い移動の支度を始めた俺に、その日一番の「戦慄」が走った。



『戦慄』で浮いてる。浮いてしまっている。



勝つ気なんてさらさらなかった。いくら負けることになるかだけを心配していた。そんな『戦慄』で在ろう事か勝利を収めてしまった。これは最早恐怖である。


演出、ストーリー、ピエロ、その他諸々よりも、その事実が何よりも俺を恐怖させた。まさか最後の最後に極上の恐怖を仕込んでくるとは。幽霊の正体見たり枯れ尾花と得意になったいた俺を得体の知れない何かが包んだ。








東京は池袋、グリンピース池袋東口店の二階に、恐怖は確かに存在した。お立ち寄りの際は是非体験して欲しい。身の毛もよだつ何かが、貴方の心を掴んで離さない事を約束する。

6

たれめさんの

※本記事はユーザー投稿コンテンツです。

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このコラムへのコメント(8 件)

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たれめ
投稿日:2017/03/27
あきうめさん
よく分からない事、それが戦慄の一番の恐怖だと思います笑
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あきうめ
投稿日:2017/03/27
当時、恐怖新聞とどちらが恐いのか打ち比べてました。
ああごめんなさい。比べるほど打ってませんでしたが、よくわからないまま出た思い出が甦りました(笑)
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たれめ
投稿日:2017/03/26
FLEAさん
あの台の存在そのものが戦慄ですね

余りの恐怖に脳が思い出すことを拒否しているのやもしれませんね…
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たれめ
投稿日:2017/03/26
藤原ジェットさん
ありがとうございますw
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たれめ
投稿日:2017/03/26
ポリンキ→さん
オススメです。
今度是非並びで打ちましょう。
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FLEA
投稿日:2017/03/26
結構怖い話とかあったような…
いや、どーだったかな⁉︎あれ?ピエロ?
んなの居たっけな⁉︎


……打ったのは打ったんですよ。ガイコツのフィギアみたいなんも微かに覚えてるし、そこそこボーナスも引いたと思うんですが…


なんでかなぁ
全く内容を覚えて居ないことに戦慄っす。
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藤原ジェット
投稿日:2017/03/26
クッッッッソ面白いww
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ポリンキー
投稿日:2017/03/26
むしろたまにとなりのゼットゴールドを打つものです…。

いつも絶対打たない台ナンバー1でしたが、今度さわってみます…。

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