あのときオレはクズだった　第44回　~第2部ガイド~

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

フィリピン移住を決意!?　ついにクズ生活に終止符か

　金を掘ることはできなかったものの、ガーナでの経験によってさらにNPO活動に対する思いが強くなった2011年の冬。NPO法人ができるまでにはまだ数ヶ月かかるし、すでに東京の家は引き払っていたので愛媛の実家に戻り、ダラダラと過ごしていた。

　2012年の1月からは再び活動の拠点を東京に移して、パチスロ必勝ガイドで少し仕事をしつつNPO活動をしようと思ってはいたのだけど、この1年間で留学費用だとか旅費だとかNPO法人の設立費用だとかで数百万円つかっていたため、金銭的な余裕はない。そのなかで新生活に向けた敷金礼金、家電の購入などでまたしても数十万円が飛んでいくのだから、どうにかしなければいけない。ということで、つかの間の実家生活を満喫しながらアルバイトを……やるわけがないのである。手っ取り早く金を作るのなら、なにをさておき博打に限る。ということで実家から徒歩で毎日40分かけて、パチンコ屋に通うことになったのだった。

　かといって、毎日のようにデータを取って高設定をつかもうにも、そもそも愛媛県になんて高設定など存在しないと思っているわけで、となると頼りになるのは己のヒキのみ。どうせヒキ勝負なら返りの大きい爆裂台がいいだろうというわけで、ちょうど2011年に導入されて触ったことのなかったミリオンゴッドの系譜を、とにかく適当に打ち散らかしていたわけだが、やはりパチスロの神はクズのことがよほど好きなのだろう。適当な台で、解析数値も一切知らないまま適当に打っているだけなのに、7000枚、4500枚と毎日のように簡単に出る。そして、極めつけは取り切れずの1万5000枚オーバー。あっという間に新生活への資金を稼ぎだしたため、その金を握りしめて再び上京することになったわけだ。

　ライターを辞める前は駐車場込みで15万円くらいの3DKのマンションに住んでいたのだが、新生活は西東京市にある6万ちょいの狭い1ルーム。生活水準を落とすことにまったく抵抗のない自分としてはなかなか悪くない環境の中で久しぶりの日本生活を満喫しつつ、ガイドの仕事をしたり、ついにスタートしたNPO法人の活動をしたりと精力的に動いていたわけだが、上京して間もない2012年上旬に当時のパチスロ必勝ガイドの発行元であった白夜書房、その子会社の白夜プラネットが携帯カジノサイトを運営していたということで社長が常習賭博容疑で逮捕されてしまい、その影響もあって白夜書房のパチスロ必勝ガイドも発売自粛の形をとることになったしまった。俗にいう、白夜ショックである。

　テレビやイベントでいろんなところから収入を得ている人であればたいした痛手はなかったのかもしれないが、自分は少ない収入ながらその大半をガイドから得ていたわけで、そこが断たれるというのは死活問題。数ヶ月にわたってほとんど収入ゼロの状態が続いていく中で蓄えはどんどん目減りしていき、さらにはNPO法人の活動も自己資金の持ち出しがほとんどだったため、金銭状況はみるみる悪くなっていった。

　まあ、個人的には別にお金なんてなくたって構わないし、白夜にもパチスロ必勝ガイドにも恨みや不満は特にないのだけど、それでも、この一連の事態の中で考えた。やはり、フリーランスはいかに自分を売り込んで、ひとつのところだけじゃなく、いろんなところからいろんな仕事を引っ張ってきて、稼いでなんぼ。与えられた仕事をこなしているだけの自分のような営業力も表現力もないファッション・フリーランスは、こういう予期せぬ事態が起これば、今後、すぐに吹き飛んでしまう。自分の中でも少なからず出戻りの後ろめたさを感じていたし、7月からは本格的にフィリピンでのNPO活動も始まったことだし、うーん。……きーめた。オレ、日本を完全に引き払ってフィリピンに移住します‼　というわけで出戻りの日本生活はちょうど1年で終了。一切合切を引き払い、2013年の1月に、正式にフィリピンのセブ島へ移住。現地でのNPO活動に専念することになったわけだ。

　高校入学前にパチスロに出会ってからすでに15年以上が経過していたけれど、パチスロとの出会いによってひとりの青年がクズになり、そしてまた、パチスロにまつわる様々な人や経験を通してNPO法人に興味を持ち、愛媛の田舎者がフィリピンに住もうというのだから、いやはや人生はまったくわからない。

　過去を振り返ると節目となるときはいつもパチスロがあったし、ゲームセンターなどで昔のパチスロを見ると、いまでも当時のことを思い出す。パチスロがなければ自分の人生はこうも楽しいものにはならなかっただろうし、パチスロに出会わなければこの業界に入って、子どものように純粋な仲間に出会うこともなかった。ましてや、フィリピンでNPO活動をすることなんて絶対になかったと思う。

　あのとき、オレはクズだった。こうやって、このコラムを書きながら過去を振り返ると、たしかにオレはクズだったと思うが、どうか安心してほしい。NPO活動だボランティアだと言ってはいるが、オレはいまだってクズのままである。クズではあるが、パチンコ、パチスロ業界のみんな、そして応援してくださる方々に支えられながら、活動をさせて頂いている。

　あのときも、いまも、そしてこれからも。クズはクズらしく気負うことなく、自分の思った通りに真っ直ぐ生きていきたいと思う。

　クズは、死ななきゃなおらない。

あのとき打っていた
「ミリオンゴッド～神々の系譜～」

【メーカー】ミズホ　【販売年月日】2011年8月　【タイプ】ART
新生活の資金を捻出するにあたって毎日のように愛媛で打っていた『ミリオンゴッド～神々の系譜～』。ゴッドの後継機ということしか情報がなく、また別に知識なんてなくたって引けばいいんでしょ？　と強気になって打っていたら連戦連勝。客のいない店でひとりだけ毎日タコだしする自分に店員さんがあきれるほどで、まあ、何が言いたいかというと、ミズホさん、うちの敷金礼金を出してくれてありがとうございましたってことです、はい。

クズよ、ありがとう！

この連載がスタートしたのが、2014年5月。実はパチ7本オープン前のプレオープン時からこの連載は始まっていたんですね。約1年半の連載ですね。

パチ7を立ち上げる際に、なにか読み物連載が欲しい、と思った私が最初にお声掛けさせて頂いたのが、田中氏(同時に鈴虫君氏)。

単純に私が田中氏の書く文章が好きだったということもありましたが、パチ7が目指す肩肘張らずに見れるもの、を考えた時に真っ先に頭に浮かんだのが田中氏だったんです。

「あのときオレはクズだった」

本人との打ち合わせで決めたのが、この連載。正直、不安ではありました。自分のことをクズだと公言する方は大概クズじゃなかったりするし、そんなにネタが続かないでしょう、そう思っていました。それに対する彼の答えは下の通り。

「クズエピソードなんかいくらでも出ますよ」

いくつかの事例も出して頂きましたが、この時点で私の不安は消え去りました。だってクズエピソードのクオリティが本当に高かったから…。まぁでもここまで続くとは思いませんでしたので、嬉しい誤算でした。

ここまで田中氏のクズ冒険譚にお付き合い頂いた皆様、そして田中氏に御礼申し上げます。

落ち込んだ時、凹んだ時には氏のクズエピソードをご覧頂き、絶妙なる「下には下がいる感」をお楽しみください（笑）

最後に。

これまで連載を御覧頂いた皆さんに問いたいのは「果たして田中氏はクズなのか？」という点。

なんだかんだ田中氏との付き合いは2年くらいになりますが、私は未だに判断がつきません。おぼろげながら、「自分の価値観と心中出来るピュアで強い男」なのではないか、と見当を付けています。

じゃないとあれだけの諸先輩方に可愛がられ、後輩にも慕われるって存在にはなれませんですからね。もしかしたら本当に稀有な人格を持った方なんじゃないか。そう思います。

田中氏の素晴らしき活動はコチラから！

共有する

URLコピー
Twitter
LINE
Facebook

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。