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あのときオレはクズだった　第42回　~第2部ガイド~

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

ドイツ行きの夢が断たれ、選んだ道は光り輝く金の道

　ガイドを辞めた時点での貯金は、恐らく500万円くらいだったと思う。月に何十万も飲み代を遣いながらも貯金をすることができた環境に感謝しつつ、フィリピンの留学先に5か月分、60万円を振り込んだ。ここからは無収入の時期が続くわけで、お金を適当に遣い続けることはできない。いくらフィリピンの物価が安いといっても、いったい、いつまでお金は持つのだろうか。そんなことを考えながらもフィリピンへ渡る前に、それまでお世話になったパチスロ必勝ガイドの編集長、そしてパニック7の編集長にあらためて挨拶にいったわけだが、このお二人、器がデカいというかなんというか、別の日にそれぞれにお話をしに行ったにもかかわらず、口をそろえたように同じことを言ってくださった。

「フィリピンに行くんだから、そりゃ、パチンコやパチスロの記事をお願いすることはできなくなるけど、それ以外のことは書けるだろ？　パチンコのことを書く人間はほかにもたくさんいるんだ。だから、なかには田中みたいにパチンコ、パチスロとはあまり関係のない文章を書く人間だって、必要なんだよ。フィリピンから感じたことを、これまで通り書き続けないか？　いや、書いてください。こちらからお願いします」

　そうやって、必要以上に気を遣うタイプの自分が引き受けやすいように、わざわざ頭を下げてお願いしてくれたのである。

　めちゃめちゃ、ありがたかった。いま思い返しても、このお二人の申し出がなければ、いまの自分はないと思う。

　そんなことを経て、ガイドに辞意を告げてから2か月後の2011年1月9日。30歳という節目の誕生日を4日後に控えて、自分はフィリピンのセブ島で英語の語学勉強をスタートさせた。セブ島での留学生活についてのエピソードを書き始めると、それだけで50回くらい連載できる量になるので省略するが、留学中には東日本の大震災があったり、バカラにハマりすぎて毎日のようにカジノに通ったり、相変わらず女の子がいる店でテロンテロンになるまで酔っ払ったり、孤児院で毎週、ボランティアに参加したり、同じ時期に留学にきていた日本人に恋をしたり、いろいろとあったわけだが、肝心のドイツにある世界平和村での住み込みボランティアについて、少しふれておきたい。

　予定通り、2011年の2月に募集がスタートするということで、ホームページにて募集要項が発表されたのだが、それを見て目を疑った。必須と書かれたものの中に、｢ドイツ語｣の文字があったのである。

　自分が事前に確認していた外部の紹介サイトでは、英語が必要だと書かれていた。だからこそ、こうやってフィリピンにまで勉強にきているのに、そうですか。ドイツ語ですか……。

　まあ、こんなものはハッタリでどうにかなるもの。潜り込んでしまえばこっちのもので、そこからドイツ語を覚えていけばいい。というわけで応募の際に｢日常会話程度ならドイツ語ができます｣と、ドイツ語なんて挨拶すらもわからないのにそう書いてみたら、その二日後に担当の日本人からメールが返ってきた。

「申し訳ありません。関係先の機関とのコミュニケーションもすべてドイツ語で行いますので、日常会話程度の語学力では、難しいと思います。今回は、申し訳ありませんが採用を見送らせていただきます」

　ですよね。だって、ドイツの施設だもんね。英語じゃなくてドイツ語が必要に決まっているよね……。

　というわけで、フィリピン生活を終えた先の予定は、まったくの白紙に戻ってしまったわけだが、あまり物事を深刻に考えないのが自分の短所であり長所でもある。とある晩に甘いニオイのするフィリピーナをグッと抱き寄せ、ジントニックをがぶがぶ飲みながらこう考えた。

　人の施設にお世話になろうと思うから審査基準があったり選考でハネられたりするわけで、だったら、自分のしたいことをできる組織を、自分でつくっちゃえばよくない？

　というわけで、あっさりと自分でNPO法人をつくってしまうことを決めたんだけど、調べてみたらNPO法人を設立するには、審査や認証に半年ほどかかるという。5月末に日本に戻って申請を出したとしても、動き始めることができるのは、2012年の1月か2月から。じゃあ、留学が終わってからNPO法人スタートまでの空白の半年は、いったいなにをしようかなあ。そんなことを考えていたら、共通の知人を介してマニラの日本食屋で飲むことになった男性の口から、こんな話が飛び出したのである。

　オレはいま、ガーナで金を掘って生活してるんだ。ガーナにはまだまだ金が埋まっていて、少ない日で1日5万円。多いときは200万円ぶんくらい取れるんだよな。それをガーナ人のスタッフと山分けして生活してるんだ。

　なんという夢のある暮らしだろうか。聞けば、日本から何千万円もかけてユンボを輸送して、本格的に金を掘っているとのこと。東南アジアくらいしかしらない世界の小さな自分にとって、アフリカのガーナ、金を掘るという二つのキーワードが強烈に響き、思わずこう訊ねていた。　ボクがもしガーナに行ったら、ガーナ人と混じって一緒に金を掘らせてもらえますか？　そうすると、その男性は、ニヤリと笑ってこう言った。

　いいぞ。きたらオレが家もメシも面倒見てやるし、金も掘らせてやる。ただな、こうやってガーナに行きますといままで何十人もオレに言ってきたけど、本当にガーナまできたやつは、誰ひとりとしていないんだよな。

　ふふふ。嬉しいことを言ってくれるじゃないか。こと旅に関しては無類のフットワークの軽さを持つオレにとって、その言葉はごちそう。誰もきたことがない？　オレをそいつらと一緒にしてもらっちゃ困るなあ。

　20週間の語学留学を終えて東南アジアをぐるっと一周したあとに、半年ぶりに日本へ帰国。NPO法人登記の段取りを済ませた後に、西麻布にあるガーナ大使館に駆け込んだのが7月のこと。

　お金がほしかったわけじゃない。ガーナ人と一緒になって金を掘る日が、ただ待ち遠しかった。

あのとき打っていた
「パチスロモンキーターン」

【メーカー】山佐　【販売年月日】2011年3月　【タイプ】ART
フィリピンに渡って、はじめて長期で、しかも物理的にパチスロに触れられない期間があったわけだが、何が悔しかったって、ちょうど留学期間中に山佐から『パチスロ　モンキーターン』がリリースされたことである。得られるのはネットの情報のみ。どんな仕組みで、どこまで世界観が再現されているのか。それを確認できないことがとにかく悔しくて、フィリピーナの腰をグッと抱きしめながら、毎晩のように酒を飲んだものである。

クズの成績表：★★★☆☆（クズというか太い）

「精神がとにかく太い」

これは前から田中氏に抱いていた私の想い。だって普通、ドイツ語が必要だって記載を見たら、諦めるか、精々英語が必要だって書いてあったとこに文句言うくらいですよね。

彼はね、ウソをついて応募しちゃうんですよ。

まぁドイツ語を学びなおそう、とせずにウソで応募するってのは、クズたる所以を発揮してくれていますよね。

ガーナ人と一緒に金を掘る。大抵の人間はこの一文に夢は見ませんよ。ぶっちゃけビビる。それこそその場では「俺は破天荒だぜぇ」というキャラの人間が行くって言ったのに、結局行かないくらいが関の山。

だって「ガーナ　金」で画像検索してご覧なさいよ。

田中氏の素晴らしき活動はコチラから！

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田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。

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