時代～鈴虫の一分～第13話～ハーデス

鈴虫君時代～鈴虫の一分～

年に数回、パチスロを打ってドキドキすることがある。自分がパチスロを打っていて、一番楽しい瞬間は、投資分を回収し、勝ちが見えた場面だ。投資2万、持ちコインは1000枚、ARTの残りゲーム数は300G、あとは出したぶんだけ浮きになる、そんな場面である。

とりあえず、トイレに行って落ち着いて、戻るときにコーヒーを買う。タバコに火をつけて勝利の一服。さあ、ここからは楽しい展開が待っている。この間のドキドキがたまらなく好きなのだ。

この日はハーデスに座っていた。投資は2万を越えたところ。初当りは重くも軽くもなく、普通なら気持ち悪さだけが残る展開だが、不思議とそわそわしていた。何か引けそうな気もするし、何も引けなくても悔しくない。まったく不思議な感情である。

ケルベロスで50Gでも何も思わないし、これが終わったら流してやめようか、そんな感じで消化していると、中段黄7から30Gの上乗せ。次ゲームでジャッジメントを煽るフェイクが発生。これが3G続けば「おっ」と思える場面だが、2G目に演出発生せず。あらっと、首をかしげた瞬間、画面にひびが入って、全回転が始まった。

これまで全回転は3回引いて、3、3、5。全回転の頂はいまだ未経験だった。ぐるぐる逆回転するリール液晶とリールをぼーっと眺める。超えろ、超えろ、超えろ、超えろ、超えるな、超えろ。心の声が自然と漏れる。これまでより長く回転して止まった数字は「7」だ。

全回転GOD一発目のストックはケルベロスだったが、その消化中に老犬になったように白くなり、同時に赤扉が閉まった。あああっっっ、これGODじゃん。左に通常目。いわゆる、青7、GOD、黄7が止まってGOD1確。こんなGOD、見たくないって。

ふぅーと息を吐き、下を向きながらドル箱にコインを詰めていると、今度は液晶が消えた。左から押してくださいと指示をされる。1時間でGOD3発。自分は手に力を込めて、缶コーヒーをぎゅっと握りつぶし、新しいコーヒーを買いに行った。今日は長くなると。

GODを3発も引けば必ずどこかで強烈な上乗せがある。2回のハーデスで1200、810という上乗せがあり、ケルベロス消化中に下段黄7から300乗せもあった。ドル箱には雑に詰めていたので、普段よりも数は多く、らくに10箱を超えた。夜の8時を過ぎてすべてを取りきったときには15箱が遠く離れたカウンターの前に置かれていた。

いいよ、もう。そんなにあるんだったら、負けている人に1箱ぐらいプレゼントしたい気分だった。おれはやさしさで生きているバファリンのような存在に憧れているから、許されるなら配りたい。みんなに配給したい。

出過ぎるとなぜ冷めた気分になるのだろうか。ここ数年における最高出玉は確実なのに、計数機を眺める目は死んだ魚のよう。表示が10000を超えても冷静で、14000を超えた時点で数字のカウントアップがゆるまったときに少しホッとしたことを覚えている。そして、ずっとそわそわしていた感覚がぷつんと消えた。

この出玉、俺のじゃないんだ。友達が打っていた台を、暇だったら打ってくれって代打ちしていたんだ。ドキドキなんてできるわけねーだろ。上の文章をもう一度、読み返してほしい。人の代わりに打ってGODを引いてしまったときの正直な感情がところどころに出ていると思う。他人の台でなにやってんだ、俺は…。

鈴虫君の実戦結果

【今回の実戦】
実戦機種：アナザーゴッドハーデス（友人の台）
ゲーム数	出来事	投資など
1時間以内	クラッシュGOD
	犬GOD
	プチュン	14,000枚over

【ここまでの収支】
勝敗	収支
3勝9敗	+5770枚

※編注：当然の如く、今回無効！

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鈴虫君: 代表作：ほぼ週刊勝利人、負け人相談室、時代～鈴虫の一分～

北海道釧路市出身。大好きなパチスロを打って楽に暮らせると思い込みライターになる。パチスロ必勝ガイドを中心に多岐にわたって活躍している…わけではなく、他人のおこぼれにあやかろうと必死にしがみついている。好きな機種はカイジとニューパル。

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