『せっかくフリーズ引いたのに』第3話

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3話
◆開

　わらわらと前方にひとが走り出す。オレの場所は真ん中より後ろの方。マズいっ！
　と、そこにジャムちゃんの声が続く。

「あ、言い忘れてたけどここに送られてきたときみんなが持ってた荷物は自由に使っていいからねー。あと、スマホがない時代のチャレンジャーたちには私が特別にプレゼントしておいたからポケット確認してね」

　え、どういうことだ？　スマホがない時代……？
　なんて疑問を抱いているうち後ろの連中にみるみる抜かされていた。
　扉はもう、開いている。

　余計なことを考えてる場合じゃねえ。
　自分のポケットを確認しながらオレも走る。
　スマホに小役カウンター、財布……一通り揃ってるな。
　最近北斗打つとき中段ベルをカウントするようにしてて良かった。ありがとう、しのけん先生！

　なんとか最後尾は免れ、扉をくぐると──超巨大な円形シマが待ち構えていた。
　たぶん150台全部で形作られているんだろう。全体が観察しやすくて良さそうだけどあまりにもでかすぎて逆にどうなんだろう？
　そして、中央にはドラムくんのフィギュアが置いてあり、たぶんそこが解答スエリア。

　まずはどんな機種があるか把握しておかないと。
　そう考えるオレとは裏腹にもう台を決め、打ち出しているやつらも多い。

　シニア層はやっぱり『ジャグラー』や『ハナハナ』あたり。その並びにある『沖ドキゴールド』にも数人。
　……いや、沖ドキは流石に悪手すぎんか？　まあ、あのへんは自分ルールで設定決めつけたりするもんだしな。まぐれ当たり以外は敵じゃないと思っていいだろう。

　個人的に気になるのが『新ハナビ』。設定4段階だから絞り込みやすい、はず。
　待て。その隣に数台並んでるのは5号機『ハナビ』？　なんで置いてある？
　……ああ、風営法とか関係ないから別に構わないのか。だとしたら、あれも設定4段階だし、ビッグ中のハズレさえ確認できればほぼ5か6。有りだ。

　え？　その隣を良く見たら古ぼけた筐体の『花火』が2台ある。さらに並んで『大花火』まで。もしかして伝説の4号機？
　当時オレは子どもだったからもちろん打ったことはない。
　その4号機『花火』をさっきのヒゲジジイが打ち始めている。

　もしかして、スマホがない時代のチャレンジャーって言ってたのは……時を越えて集められているってことなんか？　一体どんな技術で？

　あれこれ考えていたら大声が響く。

「ハーハッハッ！　俺サマの豪運にかかればこんなもんよ！！」
　見ると、身長190cmはあろうかという男が『スマスロ北斗の拳』でキリン柄トロフィーを出している。
　ふぁっ！？　駆け寄ると朝イチ42ゲームでぶち当て、単発終了。

　大男は中央の解答エリアに悠々と足を運び……
　ドラムくんのリールが回り、777が揃う。「フィーバー！」と電子音声が鳴る。
「じゃあな、養分ども」と言い残し、サラサラと砂のように消えて行った。

　生き残り枠数6/99。

(続く)

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