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母ちゃん
母ちゃん
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玉のゼロさん
すっかり使われなくなっちまった。 そんな哀愁を込めてこの名前を着けました。 - 投稿日:2018/02/09 07:20
ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
澱みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、
久しく留まりたる試しなし。
世の中にある人と住処と、またかくの如し。‐鴨長明‐
昔の方の言う通り、世の中全てはあぶくと等しく流れて消えて
一つの水流となりつつまた新たなあぶくを作り、
形成しては消滅を繰り返す、
それでもまた、一つの形を形成していく無常観。
『昔は良かった』と、つい口からこぼしてしまう前に
『今』の良さを見つけなければいけませんね。
『今』を否定し続けたって10年後には過ぎ去った今日の事を
『昔は良かった』と口からこぼれてしまいますから。
毎度、ご無沙汰しております。玉のゼロです。
さて、堅っ苦しい割には当たり前な内容の前置きから始まりました。
なんだか久しぶりで、文字を紡ぐひと時がとても心地よいです。
年末年始と新たな法人を求めての面接なり準備なりで
なかなかに時間が取れず。
パチ7様への訪問回数も激減しておりました。
しばらく行ってなかった馴染みの定食屋みたいな距離感で、
コメントを残すにも躊躇ったりと
いらぬ乙女心を炸裂してはタブを閉じる毎日。
そろそろ『ここはお前の日記帳じゃねえんだチラシの裏にでm(ry」
が、聞こえてきそうなので本文と参りましょう。
私の業界歴は10年になります。
短いその時間の中で、最も涙したお客様のお話を紡がせていただきます。
‐母ちゃん‐
『良~~い唄だよねえ、アタシこの唄ほんとに大好き』
CRFEVER.X JAPAN、ロックなこの台の前に彼女はいた。
『Forever Love』を選択し続けるお客様。
当時の御年52歳
褐色な肌の色、話し方は和田〇キ子さんのように
距離感がやたらと近いものの、心地よい。
そんな彼女の後ろには
『母ちゃんが楽しければそれでいいんだ』
そう言いながら観戦用の椅子に座って微笑んでいた旦那様。
この姿は平日の20時~閉店の間に当店ではお馴染みの光景。
興奮する奥様を後ろで微笑みながら見守る旦那様。
前回のコラムでも書きましたが、需要のある台はアウトが少なくても
特定のお客様の為に残すという方針でしたので
東北六県でもかなり最後の方まで『X JAPAN』は残り続けました。
こちらのお客様ですが、『母ちゃん』とスタッフ間で呼ばれており、
パチンコを楽しむと同時にスタッフとの触れ合いが多く。
いつもと様子の違うスタッフがいては
『何かあったの??今日元気ないじゃない??」
と、一瞬で間合いを詰めては懐に飛び込み
気付けばスタッフも悩み相談をしてしまう。
ただ、答えはいつも一緒。
『大丈夫!!今生きてるべ!?なら大丈夫!!生きてれば大丈夫!!』
まあ、解決する事はないのですが何故か圧倒的な説得力に屈服。
ちなみに私が唯一した相談内容は嫁ちゃんのお父さんと喧嘩した話でした。
嫁ちゃんのお父さんはあまりパチンコ業界に良い印象を持っておらず。
また、自法人のオーナーとも面識があり
その印象もあまり良くないという二重苦。
『まだ若いうちに他の仕事をする気にはならないのか?』
という部分から喧嘩に発展した内容だったのですが・・
答えは
『大丈夫!!今生きてるべ!?なら大丈夫!!生きてれば大丈夫!!』
生きているから次に嫁ちゃんの実家に顔出すの嫌だなあ
と、思っていたのですがねえ・・
とはいえ、生きているから嫁ちゃんと一緒にいられるで。
気まずいけれども同時に、生きていれば楽しい事もある訳で。
苦しい事と楽しい事はある意味、等価値で等しく
天秤が触れながらもバランスが取れるものなのかもしれない
母ちゃんの言葉の捉え方はスタッフそれぞれが違ったけれど、
皆、純粋無垢なこの言葉がお気に入りだった。
『ゼロちゃん!!10,000発と余り残して交換ね!!』
カウンターでのいつものやりとり。
『ゼロちゃん!!金ピック(最強保留)外れたんだけどー!!』
ホールでのいつものやりとり。
『ゼロちゃん!!破壊モード(※)入ったからHIDEちゃん出して!!』
※潜伏確変or小当たりのモード移行演出。
X JAPANのメンバーが勢揃いすれば潜伏濃厚の創造モードへ移行。
YOSHIKIとHIDEは出現しにくく出現時点で期待度UP。
なお、HIDEご指名なのは期待度ではなく母ちゃんの『好み』
僭越ながら私めがVコントローラーを右に振りながら
『オンギター!!HIDEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!』
どんだけ気合入れても、まず出てこないんですけどね・・
そんな、破壊モード中のいつもの無茶ぶり。
PATAさん出すのは得意なんだけどな・・
稼働が多い日には正直対応する機会が多い分、
業務の負担ではありましたが、それ以上に楽しんでいただけている
母ちゃんの笑顔はすべてを許してしまうほど
豪快で、かつ朗らかでした。
『土日は息子たち帰ってくるから遊びにこれないのよねー』
母ちゃんが来るのは平日の夜のみ。
ご飯を作って旦那様の帰りを待ち。
二人でご飯を食べて、後片付けが終わったら当店へ。
そして2時間くらい遊んで帰る。
それがこのご夫婦様のライフワーク。
土日で平均稼働が上がる中で、
むしろアウトを下げるX JAPAN。
週休二日制のX JAPAN。
明日は月曜。
さあ、母ちゃんのおでましだ。
‐月曜日‐
母ちゃんはこなかった
‐火曜日‐
母ちゃんはこなかった
‐水曜日‐
母ちゃんはこなかった
‐木曜日‐
母ちゃんはこなかった
‐金曜日‐
母ちゃんはこなかった
‐一ヶ月後‐
母ちゃんはまだこない
‐二ヶ月後‐
母ちゃんはまだこない
‐三ヶ月後‐
母ちゃんはまだこない
半年程時間が経った20時頃。
短髪で小柄な男性のお客様。
観戦用の椅子で微笑みを浮かべていた『旦那様』がご来店されました。
旦那様はまっすぐカウンターへいらっしゃいまして、
カウンターに立つ私へこうおっしゃいました。
『母ちゃん、すい臓やっちまってさ。死んじゃったよ・・・』
晴天の霹靂に、言葉が出ませんでした。
私の仕事は風俗業であり、接客業。
業務を行っている以上、プロとして、
応対で行き詰まる事をするのは失格だと自覚しております。
それでも言葉は出ませんでした。
『それは、お気の毒でした』
こんな上っ面の言葉で終わらせられるほど、
私の心は強くありません。
なんて言葉をかければいいのか、
母ちゃんの笑顔や思い出を呼び起こしながら、
力のない微笑みを浮かべる旦那様の前で、
固まる私へ、旦那様は続けてこう言いました。
『入院しながらね、母ちゃんまた打ちに行きたいって。
皆の顔見て、話して、当たらなくてもいいから、また行きたいって。
しばらく行ってないからアタシの事忘れられちゃってるかな?
まだXあるといいなあ、退院したらそのまま打ちに行くからね。
元気にしてたかって、遊びに行くんだから!!
そう言ってたんだけど、病院からは出れなかったよ・・』
私はインカムで言葉を発しました。
『申し訳ありません、カウンターヘルプお願い致します。』
こう言ったつもりです。言葉になっていたかはわかりません。
嗚咽が入り混じり、鼻水と涙が混ざり合った顔面で
私は端玉倉庫へ走りました。
最もツラいはずの旦那様へ言葉をかける事ができず
自身の慟哭にも耐え切れず、倉庫で号泣しました。
ホールの騒音の中でも、私の声は聞こえていたかもしれません。
それほどまでに、私は自身の感情を抑える事はできませんでした。
ヘルプに入ってくれた子も同じように、端玉倉庫へ駈け込んできました。
少し落ち着いた私が対応を変わります。
旦那様は混み合うカウンターに遠慮して、少し離れた所へ移動しておりました
停滞していた交換業務を終わらせている間に
ヘルプに入ってくれた子の涙も止まり、
申し訳なさそうに、旦那様はお客様のいなくなったカウンターで
こう、言いました。
『この会員カードなんだけど・・お店で預かってくれないかな?
俺、パチンコやらないし・・持ってると、母ちゃん思い出しちゃうから。
でも、中身無くなっちゃうと母ちゃんが消えるみたいで嫌なんだ・・』
会員カードの中身はいつもの10,000発と端玉分。
当時は3.3円交換でした。
旦那様へ価値の説明は致しました。
それでも、決意は変わらず。
時間帯責任者だった私はお客様の意向を汲み、
カードをお預かりした上で、神棚へ置かせてもらいました。
神棚は二階の事務所にあり、
監視カメラ映像がばっちり見える場所へあります。
そこへ置いておけば、母ちゃんはいつでもホールの皆を見れると思いました。
時間は流れていきます、
X JAPANは無くなりました。
当時のスタッフは残り少なく、
私もまた、間もなくこのお店から姿を消しつつあります。
『なんで神棚にこんな古い会員カード飾ってるの?』
昨年の秋に赴任された店長へ顛末を伝え、
『え?なにそれ?ちょっと気持ち悪い』
その言葉を聞いた私が激怒していなければ。
自身の立場をわきまえぬ暴言を吐露しなければ、
今ほど事務所の空気は悪くなかったでしょう。
その日以来、大きな溝を埋める事もできず、
私は、母ちゃんが愛してくれたこのお店を去る事となりました。
ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
澱みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、
久しく留まりたる試しなし。
世の中にある人と住処と、またかくの如し。
全ての物事は流れにより変化し、消え、また生まれます。
一所へ停滞し続けた水は濁り、澱み、腐る、
改革と変化という流れがそれを許さない。
これもまた、一つの結果と思い。
儚き無常観を謳ったこの詩も解釈を変えれば、
『大丈夫!!今生きてるべ!?なら大丈夫!!生きてれば大丈夫!!』
水の流れが生きていれば、また生まれ変われる。
朽ちる前に、腐る前に、動きだす。
人は、なんにだってなれる。
人は、いつだって変われる。
母ちゃんが押してくれた背中を誇りに思いながら。
なんやかんやで内定もいただき、
私は、新たな土地へ旅立ちます。
感情を抑えられない私が、
この社会で生きていけるかはわかりませんが・・
やれるだけ、頑張ってみようと思います。
最強寒波をはじめ、寒い日が続いておりますゆえ、
体調管理、またシンフォギアの打ち過ぎで財布が寒くなりませぬよう。
心から、ご健勝をお祈りさせていただきます。
6
玉のゼロさんの
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このコラムへのコメント(8 件)
アウトの貢献率を越えた大事なお客様でした。
岡井様にそう言っていただけるのは今後も生きていく励みになります。
また、頑張ります。
色んな方が訪れる職場ですから、多種多様なお客様と事情はあります。
派閥を作っていたつもりはありませんでしたが、私の退職に伴い6人が一斉に退職する流れとなりました。
恐らくこれからはまた、新しい色のお店になると思います。
本文だと悪く書いてしまいましたが、全てにおいて悪い人という訳でもなく。優しい人だと思います、出会い方と、社会人らしからぬ私の対応が悪かったなあと後悔はしています。
最終的には商売なので、
どれだけ綺麗事言ってても恨まれるのは事実ですが、だからこそお客様を大切にしなければただのギスギスしたお店になってしまうと私は考えます。
ただ獅子皇様のように思っていただけると、私としてもまだこの仕事を続ける励みになります、本当にありがとうございます。
Twitterでもお話ししましたが、短気な私に原因は間違いなくありますし。
社会に向いてないなと、思うのも事実。
もう少ししたらいっぱい書きますので、でも春には難しくなるかな?って感じですorz
新天地でのお話も待ってます。
その時その場そこに居た人々羽陽曲折
他人が家族や親族を超えた時
その人柄が出ると言います(ホントか?)
受け入れたゼロさん
旦那さんもねゼロさんだからお願いしたのかもよ
新店長人間的に損をしましたね
その内・・・だぜ
こういうスタッフさんのいる店で打ちたい
スタッフの大事な思い出を汚い言葉で済ます店長だったらこちらから願い下げです。
つーか店長ク&&~~∥*&@@#*∥~→@@_→~
失礼しました。
新天地も決まり、新しい人生のスタート。
奇跡的ですが、私のモットーも
生きてりゃどーにかなる。
今日も生きてます。ありがとうございます。
そして落ち着いたらまたコメントもコラムも書いて下さい。
待ってますから。