時代～鈴虫の一分～第3話～

鈴虫君時代～鈴虫の一分～

今年も日本にいくつかの台風がきた。そのうちのひとつが関東に上陸した日の夜、仕事を終えたおれは自宅のある駅に戻った。時刻は20時、当初はマッサージに行こうと考えていた。好きなことしかやってないし、仕事なんてそれほどないし、身体なんて疲れちゃいないが、マッサージを受けることで仕事をした気になる変則マインドコントロールである。

その日は仕事で負けていた。性格によって分かれるところだが、おれは負けたときに散財するタイプで、2万負けも2万5千円負けも変わらないだろと考える。逆に勝ったときこそ質素に、よく言えば勝って兜の緒を締めるほうだ。どちらかというと、勝ったときに焼肉を食べたり、夜の街に消える話を聞くから、おれの考えは少数派だろうか。

しかし、この日の夜は強風がおれの心を押し戻すようにマッサージ店へと足を向かわせなかった。代金の3千円がもったいないのである。そのかわり、びゅんびゅん吹く追い風が駅前のスロ屋に向かわせるから困ったもの。そうだ、打ってマッサージ代を稼ごう、むしろ今日の負け分すら取り戻しちゃおう。希望からくる悪魔的プラス思考。ギャンブラーが陥る底なし沼だ。

投資千円でヒットし、千枚出れば本日はほぼチャラ。そのうえでマッサージに行けば気分は最高潮で、おれの周りにだけ結界ができて雨や風を受け付けない状態まであり得る。そんなスペシャルプランが思い浮かんでしまったら突撃しないのはただのバカ。なんのためにパチスロを打ってんだって話になるじゃないか。よし、今日は勝ったな。少なくとも気持ちでは勝っている。気分が晴れているので傘をささず、雨をかわすようなステップでスロ屋に入った。

良さそうな台で空いているのはやはりジャグラーか。特に目立ったのはファンキージャグラー。気のせいかもしれないが、並びで高設定が投入されているようなデータを残している。足が止まったのは総ゲーム3444G、ビッグ13、REG16の台。

そこそこ稼働のあるホールで、20時を過ぎても5割以上の稼働があるのに、こんな中途半端な総ゲーム数、それも悪くない数値で空きがあるのは不思議だが、いつもスロ屋では上から目線の立ち回りを武器としているおれにとって、出した結論は客がバカ。これに尽きる。

2連敗を喫したことで逆に心は落ち着いている。負けるときは負けるし、勝つときは不思議な勝ち方もある。たしかな理論を持って戦っていればいつか結果がついてくるのだから、あとはブレない心を自分がどれだけ保っていられるか。幸い打てる台は見つけられるのだから、けして悪い状況ではないだろう。

339 ヤメ　10K

そうか、無抽選だったんだな。3000Gを過ぎたあたりで一度、中だるみがくることは、長いパチスロ人生で何度も経験済みじゃないか。何が悲しくておれは20時過ぎに中だるみゾーンを打たされてるんだよ…。誤解のないように言っておくが、中だるみゾーンはあくまでおれの経験上。それをピンポイントで掴んでしまったことが悔しい。

もう夜からなんて打てない。なんで他人の垢がついた台を打たなきゃいけないんだ。次は朝から閉店まで打つ覚悟で挑むノーガードパチスロを解禁してやる。リハビリはこれにて終了、そう、おれは朝から高設定を掴むスタイルで今までやってきた。茶番はここまで。次回から怒涛の連勝が始まることをここに約束しよう。

外に出ると雨も風も止んでいた。嵐の前の静けさというやつだろうか、それともおれが作った結界か。どちらでもいいが、明日は絶対に返してもらおう。傘をスロ屋に忘れてきたんだ。

鈴虫君の実戦結果

【今回の実戦】
実戦機種：ファンキージャグラー（3444G BB13 RB16）
ゲーム数	出来事	投資など
339	ヤメ	10,000円

【ここまでの収支】
勝敗	収支
0勝3敗	-1400枚

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鈴虫君: 代表作：ほぼ週刊勝利人、負け人相談室、時代～鈴虫の一分～

北海道釧路市出身。大好きなパチスロを打って楽に暮らせると思い込みライターになる。パチスロ必勝ガイドを中心に多岐にわたって活躍している…わけではなく、他人のおこぼれにあやかろうと必死にしがみついている。好きな機種はカイジとニューパル。

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