パチンコ打ちいにったら家族が増えた話

その日、僕はいつものように仕事帰りにパチンコを打ちに行きました。
ちょうどエヴァ6が出た時の頃ですね。
のちに福音ショックともいわれ、パチンコ屋に大ダメージを与えた台ですが、僕はとても好きでした。
今日はどんなプレミアを見られるんだろうなぁ？　なんて思い、いざ車を降りホールに足を運んでいる途中のことでした。
いたんですよ。奴が。あの人を駄目にしてしまう恐ろしい生き物が。
「ニー」
そういって奴は僕の足元にすり寄ってきました。「ニャー」ではありません。「ニー」でした。生まれて間もないであろう舌っ足らずの声で「ニー」と鳴きながら僕の足元にすり寄ってきたのです！
どう見ても生まれて間もない子猫です。確実に野良猫のお子さんです。お母さんはどこですか？　なんて訊きたくなるレベルの幼き猫です。
ペットを飼えるか飼えないかでいえば飼える環境にあった僕はその瞬間決意します。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　無視しよ！


この選択を冷たいと思う人がいるかもしれません。ですが、飼う気ないのならかまってはいけない（どう見ても飼い猫の場合は別）というのが僕の持論であります。
かまってしまえば情が沸いて飼ってしまうのは間違いありません。なので僕としては苦渋の選択だったわけです。決していち早くパチンコが打ちたかったとかそんなわけではありません。
とりあえず車がそこそこ出入りする場所だったので、さすがにここは危ないと思い子猫を持ち上げて駐車場の奥まで連れていき放置しました。
それが僕にできる無視の限界でした。
今思えば、これがのちのとんでもないプレミアフラグの前兆になっていたのかもしれない。

そのまま子猫から逃げるようにダッシュでホール内に入りました。
ちょっとだけ良いことしたし、これは勝ったなシメシメくらいに思いながら予定通りエヴァを打ち始めました。
その後の展開は流石に覚えていないのですが、トントンくらいの結果だったと思います。覚えていない時点で負けかチョイ勝ちだったはずです。the養分脳。
数時間ほど打って閉店も間近になってきたので帰ろうと思った時のことでした。
いざ席を離れようとした瞬間のことです。
ひざ元にぽふって感覚があったんですよ。
やわらかいというか優しいというか、なんかぽふって感覚が。
さっきの子猫がですね、僕のひざ元にジャンピングしてきたんですよ。おりこうさんですねぇ～なんて言いたくなるレベルでした。
ほんとマジでびっくりするくらい完璧なタイミングでした。まるで終わるの横で待ってたんじゃないかってくらい奇跡的なタイミングだったんですよ。

僕は店の一番端にある島で打っていました。
入口のドアは二重です。一枚目のドアを抜けても店内に入ろうと思うと２枚目のドアも抜けなければいけません。しかも両方自動ドアです。子猫には反応しないはずです。

様々な試練を乗り越えあの子猫は僕の元へとやってきたのです。
そして終わるのを待っていてくれたわけです。
もうね、どんなプレミア引くよりもうっすい確率だと思うんですよ。激アツの実写子猫カットインが目の前で行われているわけですよ！
そんなの……もう……飼うしかないじゃないですか……。
流石にこの展開で飼わないって選択肢はありませんでした。むしろ飼える環境があるのに無視できる人なんていないはずです。
結局、子猫を抱き抱え、そのまま景品交換したりしました。
店員さんに、ものすっごい変な目で見られました。当たり前です。店員さんも猫抱えて景品交換希望する人なんて初めてだったに違いありません。僕も猫抱えたまま景品交換したのは初めてです。二度目は無いでしょう。
途中、駐車場にいた店員さんに野良かどうかの確認取ったら完全に野良だったので、そのまま猫を車に連れ込みおうちに連れて帰り飼うことになりました。
その後、なぜか僕より兄の方に懐いてしまい、兄が結婚して出ていく際に連れていかれてしまいました。
くやしい……。

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