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あのときオレはクズだった　第13回

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

亀有の町で大回転する男に未来はあるのか

　全財産7万円を握りしめてスタートした東京は亀有での新生活。いくら当時のパチスロが甘いと言っても2、3日負けが続けば7万円なんてあっという間になくなってしまうわけで、引っ越した当初は近所のパチンコ屋の状況を把握するべく、電気もない 1Kの部屋にじっと身を潜めていた。

　必要経費ということで、まずは近所の酒屋でZIMAという酒を10ケース買い、空いている時間はとにかく酔いで暇を塗りつぶす。そして、夜の10時を超えたら近所にあるめぼしいパチンコ屋3件を回って全機種の総回転数とボーナス回数をメモし、各店その日のボーナス出現率を弾き出すのが一日の流れ。マブの家に住みついていた時と同じようにそんな生活を10日ほど続けていたら、駅前にあるB店には最低でもシマに1 台、明らかな高設定が存在することが見えてきた。そして、その中でも一番設定に期待できそうな機種だったのが、店でもっとも見栄えのいい場所に設置されていた平和の『ルパン三世』だった。

　6台しかないルパンに最低でも1台の高設定があって、朝イチの競争はほとんどナシ。正直言ってヌルすぎる環境であり、負けるほうが難しい。両津○吉の町ということで適当に選んだ亀有という選択が運良くハマった格好となり、いわゆるおいしい店に巡りあった結果、全財産の7万円はあっという間に40万円にまで達したのだった。

　いま考えれば40万円だってけしてセーフティーではない。だけど、当時の自分にとってはもう安泰だと、これで大丈夫だと安心するのに十分な額だった。そんな油断がまたもや顔を出し、バイオメサイアで勝ってはヤレもしない女子との飲み会で散財していたあのときのように、お金を遣いたくて仕方ない衝動にかられはじめた。自分はお金のないギリギリの状態で打つパチスロじゃないと興奮できない、簡単にいうと変態なのだ。

　いくらパチスロが好きで好きでたまらないと言っても、打っている間ずっとパチスロのことばかり考えているわけではない。いや、むしろ大半の時間はパチスロ以外のことを考えているのが普通だと思う。難しい顔をしながら打っているサラリーマンだって、ポーカーフェイスで黙々と打つニート風だって一緒。打ちながら男が考えることというのは、たった2つ。「今日の晩メシなににしよう」と、「大勝したら絶対に風俗に行こう」。この2つだと0号機の時代から相場は決まっている。

　晩メシと性風俗。食欲と性欲。これは人間の本能と密接にかかわっているわけで、自己弁護をするわけではないが、いたって真っ当な思考。とはいえ、20歳の男ひとりがカウンターの寿司屋に入ってというのも敷居が高いわけで、ちょっと贅沢な晩メシといってもファミレスのステーキセットにスープバーをつける程度のことなのだが、こと性風俗に関しては、幸か不幸か亀有には敷居の低い大衆店が、そこかしこにひしめいていた。

　B店の景品交換所は裏口から店を出て、細い路地を入った先にあるのだけど、そこを歩いていると道に立っている、蝶ネクタイをつけたヨボヨボのジイさんが横目で特殊景品の数をチェックしてくる。そして2万円以上の景品を持っているようなら、確実に声をかけてくるわけだ。

「お兄さん、儲けたねー。こりゃ、ちょっと遊んでいかなきゃいけないね」

　こっちの投資額なんておかまいなし。3万投資の2万円交換であろうとジイさんは必ず儲けたねーと声をかけてくる。そして、景品交換所の前で狙ったかのように営業している、「ハレンチ女学園」という名のピンサロへと誘ってくるわけだ。

　世の中に数多く性風俗はあるけれど、ピンサロ、ピンクサロンほど大衆という言葉が似合う風俗はない。下町の路地裏で地味に光るピンサロのネオンというのは哀愁を感じずにはいられないわけで、これも社会勉強。とにかく金を捨てたいという気持ちも相まって、大勝した日にはジイさんに言われるがままにハレンチ女学園の小汚い扉を開けることだってあるわけだ。

「あ、いらっしゃいませっ、いらっしゃいませっ。今日もあの娘がち●ち●しゃぶしゃぶ。張り切ってお抜きくださいませー」

　下品としか言いようのないお兄さんのマイクに誘導されて真っ暗な店内を進み、ソファー席に座る。派手なユーロビートとマイクパフォーマンスはパチンコ屋のそれと大きく変わらないのだけど、なんだろう。3回目の小役ゲーム残り24Gでビタハズシを強いられているような、このドキドキは……。

「いらっしゃいまーせー。お隣りよろしいでしょうかー」

　横に座った嬢を見て、びっくりした。セーラー服を着て、当時流行っていたガングロギャルのメイクをしてはいるものの、お前、どう見ても50代だろ。というかお前、火・木・土で向かいの景品交換所の中にいるババアじゃね？

　花びら3回転の3回転ともババアの出てくるピンサロのソファーで缶ビールを飲みながら思った。いつか絶対に偉くなろう。偉くなって、3回転のうち1回転くらいは若い子が出てくるピンサロに行けるようになろう。頭の薄くなりかけている、少しお線香のニオイがするセーラー服姿のババアを見ながら、そう思ったのだった。

あのとき打っていた「ルパン三世」

【メーカー】平和【販売年月日】２０００年３月【タイプ】Ａ
【田中氏のコメント】
ツインビッグ搭載の技術介入機 2000年3月にホールデビューを果たした平和の4号機『ルパン三世』。いまや定番となっているルパンシリーズ最初の台でありながら、高い完成度を誇るマシンだった。ビッグの揃ったラインによってリプレイハズシ時のテンパイラインが異なり、シングルライン揃いの場合は要ビタ押し。下段にリプレイ・ベル・リプレイの「ベル」をビタ押しという、ボーナス絵柄を目印としない難易度の高いハズシがプレイヤーの興味と挑戦心をかきたてたマシンでもあった。

©モンキーパンチ　ＴＭＳ　ＮＴＶ

クズの成績表：★★★★☆（帰らないクズ）

交換所出たらジイさんに声かけられて、店に入ったら交換所のバアさんが出てくるって、ドリフかよ、と。

でもね、普通はバアさん演出（しかも激アツのセーラーver.）がカットインしてきたら、低設定と見切ってお店を出るんだよね。普通は。

出なかったんでしょ？（あ、いや、出したのか）

しかも出した後に「いつか偉くなろう」と来たもんだ。
私はバアさん（セーラー）にぬかれて偉くなった人を知りませんよ。だからアンタもきっとダメだ。

田中氏の素晴らしき活動はコチラから！

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田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。

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