見える闇、見えぬ光

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終電を逃すまいと走っている私に

暗がりから私を呼び止める人物。

それは芦田班長だった。



「ちょっと話があるんだけどいいかな？」

「いや終電ありますし」

「それだとこっちが困るんだよ。なんとか時間取れないかな」

そもそもこんな時間に話す方がおかしい。

しかしそのやり取りの最中に終電を逃してしまう。

「必ず家まで送っていくから」

そう言われ、仕方なく話をすることにした。



この場では話さないので、車に乗って欲しい。

向かった先は深夜営業をしている郊外のファミレス。

角席の奥へと座るように指示され、その隣に芦田班長

そして向かいにはガタイのいい歯抜け男。

二言目には「おめぇ殴んぞ？」が口癖の歯抜け男。

開口一番

「おめぇ客に設定教えてんだろコラ」

違うと否定しても返ってくる言葉は「おめぇ殴んぞ？」

このままでは話がまとまらない。



そして痛いのは嫌いだ。



仕方なく嘘をついた。１回だけ教えた事があると。

とにかく早く帰りたい。その一心だったが

否定して殴られたほうが良かったのかもしれない。

けれども



痛いのは嫌いだ。



班長が切り出す。

「まぁそれはどうでもいいんだ。話がしたいのは違うことなんだ」

歯抜け男が続ける。

「明日までに５０万持って来いよ」

「さらに設定も教えろ。おめぇの５０万それで増やしてやるから」

「増やした分はおめぇにやるよ。悪い話じゃねーべ」

もはや意味がわからない。

５０万も用意できないし、設定だったらこっそり無料で教えるから

それで手を打たないか？と持ちかけても

「アホかおめぇ？　なんで無料で教える奴がいるんだよ」

・・・そもそも５０万を払って設定教えるアホもいないと思うが。

と思ったら隣にいた。

「俺も払って教えてるんだよ。まだマイナスだけど、これから返ってくるから」

班長・・・アンタは本当にアホだな。

なんのためにカポエラ（ブラジルのダンス風護身術）習ってんだよ。

心の中ではバカにしていたが、

冷静な話ができない面子が２人いては

話が先へと進んでいかない。

とにかく５０万は無理。金融会社も断られてる。

そう伝えると

歯抜け男はこう言いだした。




「おめぇ今いくらなら用意できんのよ？それで手を打ってやるよ」



・・・ふと、独身時代に使っていた魔法のカード会社から

申請が降りて１０万円増額しますという連絡が入っていた。

そのことは言わず、１０万なら渡せると告げると

「じゃあ明日の夜持ってこいや」

「おめぇ遅番だろ。忘れたら殴るかんな」



話はまとまったが、送ってもらうことは断固拒否した。

住んでいる場所がわかると後々面倒だと思ったから。

彼女も一緒に住んでいるため、何かあっては非常に困る。

ふらふらな足取りで家に帰り、そのまま布団へ。





翌朝、私は魔法のカードを持ち、立ち上がろうとしたその時・・・・



続く

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