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しくじり店長・第6話

業界の人の話 | コラム

しくじり店長・第6話

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元・店長カタギリさん
シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。
投稿日:2015/10/24 21:13

ゴト師。

パチンコ店で不正な手段を用いて利益を得ようとする「招かれざる敵」、

その存在はホールにとっての最大の脅威と言えるだろう。

磁石を用いた玉の誘導やピアノ線を使用しての釘曲げといった原始的な手法から、

遊技台や係数機を誤作動させる電波ゴト、

はたまた不正基盤にすり替えられた台で遊技するセット打法系のゴトなど、

手口は時代の変化と共に進化したり遡ったりを繰り返しつつも、

その存在は常にパチンコ業界が歩んできた歴史の裏側に影を潜め、

人目を忍んで活動し続けてきたのである。

(ここまで、ドキュメント番組のナレーション風にお読みください)



さてカタギリさんがパチンコ店で働き始めて早くも2ヶ月。

おっかない上司たちに尻を叩かれつつもようやく仕事に慣れ、

1年間のひきももり生活のせいで人と会話することが苦手だった私も、

何とか常連さんと少しは会話が出来るようになった、

まさにそんなタイミングでの出来事でした。

 その日の昼下がり。

私がいつものように股間のポジションを直しつつホール巡回をしていると、

ワンチャンスで大量の出玉が狙える権利モノ、

「キューティーバニー」のシマにソワソワと落ち着きの無い、

見慣れない大男の姿が目に飛び込んできました。


「ん?

この人、オシッコでもガマンしているのかな…?」

トイレの場所を聞かれたら丁寧に説明してあげよう、

最初はそう思いました。

迷彩柄の服を着た、推定体重95キロで坊主頭、

推定年齢は20代後半の目付きの鋭い危なそうな男。

「フンババ」もしくは「売れ残ったジャンボ草モチ」、

そんなあだ名が良く似合う男性でした。

ルックスだけでも十分に目立つ彼と、

キューティーバニーのシマで毎回必ず目が合うのですから、

もしかして私は彼から白いバラの花束をプレゼントされて、

耳元でアイラブユーと囁かれちゃうのかしら…

ああどうしましょう今日は可愛い下着を履いていなかったわ、

などと取り乱しながらアタフタしていたところ、

その異常な雰囲気をとっくに察知していたのでしょう、

出ましたミスター・ギガンテスことツチダマネージャー、

既にシマの中央で仁王立ちでした。



ツチダさんがシマの中央に立って男の様子を伺いつつ、

シマの出口では私の直属の上司である、

「歯抜けコマンドー」ことニッタさんが退路を塞ぎ、

ニッタさんの隣には元・ボクサーのHくんが拳を構えて待機中、

という万全のフォーメーション。

そしてツチダマネージャーが持ち場をシライ主任に譲って、

自ら坊主頭の男の耳元で何やら呟いたのです。

私は胸がドキドキして、

「うわ、これすごいバトルが始まっちゃうんじゃない!?」

とゲイバーのショータイムを観覧するような気分で見守っていましたが、

さすがに身長2メートル34センチ(30%増量キャンペーン中)のツチダさん、

彼には抵抗するだけムダだと考えたのでしょうか、

坊主頭は観念したかのようにすんなりとハンドルから手を離し、

ツチダさんに腕をつかまれながら事務所に連行されました。

二人の後姿はまるで、

引退試合を終えて健闘を称え合うプロレスラーのようでした。

そして無人となったキューティーバニーのデジタルは、

1発の玉も弾かれていないのに延々と回り続けていたのです…。



あ、

ちなみに私はその様子をシマの影にかくれて、

ドル箱を拭きながら見守っていただけです。

だって怖いじゃないですか。

ビビってたっていいじゃないか、

半年前まで引きこもりにんげんだもの。

みつる。  ←誰?






・・・これがその後も店員人生の中で、

幾度となく壮絶なバトルを繰り返す事になるゴト師との最初の遭遇でした。

彼が約1時間後に疲れきった表情で事務所から出てきた時、

苦しそうな表情を見せながらも私をキッと睨みつけたあの時の顔は、

今でも忘れることができません。

そして当時まだ26歳にも関わらず毅然とした態度のツチダさん。

不良客や攻略プロ集団とも一歩も引かず渡り合っていたその堂々たる姿もまた、

今でも忘れることができないのでした。

8

元・店長カタギリさんの

※本記事はユーザー投稿コンテンツです。

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このコラムへのコメント(12 件)

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元・店長カタギリ
投稿日:2015/10/26
JackPotFANさま。

昔のパチ屋の店員は命知らずが多かった、
という点だけ押さえて頂けるとOKですw

「カタギリはケンカが弱ぇ~から店員は勤まんねぇわ」
とか言われてましたからね、この頃は。
確かにパチ屋が当時のままなら、
この年齢まで業界にいられなかったでしょうねw
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JPF
投稿日:2015/10/25
いやぁ~なかなか読んでいる側もヒヤヒヤするお話ですねw
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元・店長カタギリ
投稿日:2015/10/25
長門龍希さま。

パチンコ店の営業の裏側には、
そういう暗い話題もゴロゴロ転がっているのですよ…。

この頃はまだ何もわからなかったので、
ちょっとしたことでひたすらビビりまくってましたけどw
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長門龍希
投稿日:2015/10/25
いやはや怖い話ですなあ(´・ω・`)

ゴト師然り、逆恨みかなんかでの放火然り改めて怖いデス
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元・店長カタギリ
投稿日:2015/10/25
ピノコさま。

女性が入店しやすくなる前のパチンコ店には、
こういう泥臭い部分があったのです。

メイド服のコーヒーガールが店内にいる時代が来るとは、
想像もしていませんでしたよw
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ピノコ
投稿日:2015/10/25
元・店長カタギリさん
なるほどー!!!複数犯!!Σ(⚈ Д ⚈̫❀)
それか、不正目的の入社!!スパイ大作戦を地で行くわけですね?!
すごいなぁ・・・現実じゃないみたいです・・・
警察に捕まらない理由も納得です。こういう昔のお話、本当に面白いです。
何度もコメントしてしまってごめんなさい。ありがとうございます!(*´∀`*)
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元・店長カタギリ
投稿日:2015/10/25
ピノコさま。

仕込みの手口は「仕込み役」が特殊な器具で台を開けて、「カベ役」が犯行の瞬間がカメラに映らないよう死角を作って、
「キャッチ役」が店員に質問をして足止め、
「打ち子役」が何も知らないフリをして遊技をする

という複数犯である場合がほとんどですね。
最近はホールのセキュリティが向上しているため営業中に台を開ける手口よりも、
従業員が巻き込まれる(もしくは不正目的で入社する)ケースが多いみたいですね。

当時は警察に突き出す=店にパトカーが来るのを嫌がって、
ホールがゴト師を「処罰」して終了というのが多かったのです。
ま、
そういう時代だったという昔話でございますな(しみじみ)。



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元・店長カタギリ
投稿日:2015/10/25
茄子山葱太郎だったものさま。

そうですね、今は荒っぽい話はほとんど聞かなくなったので、
ゴトを発見しても安全第一な対応になっているのでしょう。

その店長さんも過去に相当な経験をされているのかも知れません…
というか間違いなく修羅場を体験されているでしょうなw
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元・店長カタギリ
投稿日:2015/10/25
FLEAさま。

まさにおっしゃるとおりで、当時は武闘派の店員がゴロゴロいたのでゴト師は命がけでしたね。
今は外国系のゴト師が反撃してくるので、スタッフの安全第一で対応していますね。
ま、
そっちのほうが正解ですよねw
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ピノコ
投稿日:2015/10/25
ピノコはその、不思議な仕組みを、いかにその草モチが仕込んだのかってことが
とっても気になります・・・!!その才能、別のところで活かせばいいのに・・・!

それにしてもガラの悪いスタッフの方々、頼もしくってもはやカッコイイです!
その方は警察には捕まらなかったのですか??σ(゜、。 )?

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