この胸おっぱいの「愛」を

「諸君、私は戦争が好きだ」
で始まる演説と言えば、平野耕太作『HELLSING』の少佐の其れで有名だが、今回はそれに習い、この一文で始めよう。



「諸君、私はおっぱいが好きだ」



原始、猿であった我々の眼前には尻があった。二足歩行を知り、比例して高くなった視界と共に、我々はおっぱいという新天地を獲得するに至った。然るに、巨乳とは人類が誇るべき到達点であり、掛け替えのない存在であると言える。



勿論、私に貧乳を乏しめる意思など毛頭無く、「おっぱいに貴賎無し」は洋の東西を問わず掲げるべきスローガンであると思っている。それを踏まえた上で尚、巨乳とはかくも素晴らしきものである。男ならば誰しも、酒の席で「巨乳の女の子がかいた汗を谷間に貯めてズズッといきたい」といった話を一度はした事があるだろう。無いならこの話はここまでだ。巨乳は身体の一部位として以上の、ある種の魔力を秘めているように感じる。貧乳好きを公言して止まなかった私の友人も、上司に連れられておっパブに行って以降、壊れたテープレコーダーの様に「おっパブに行きたい」と繰り返す様になってしまった。何とも罪深く魔性の存在なりおっぱい。



おっぱいは素晴らしいものであるという事は周知の事実であるとして、パチスロとの親和性が非常に高いという点も着目すべきである。パチスロユーザーのメインはやはり男性が多く、ともすれば殺伐とした状況に陥りやすい遊戯中に於いて、液晶上に豊かな胸部が映し出される事でそのストレスが緩和される効果を期待されているのだろう。軽く遡ってみても「美麗」「ツインエンジェル」「マジハロ」「真田純勇士」「麻雀物語2」「恵比寿マスカッツ」「ビキニパイ」と非常に数多くのおっぱいが御活躍されている。



今回ご紹介する台は、そんなおっぱいパチスロのある種の境地。辿り着いたので今後は二度と足を踏み入れなくて結構ですと言いたい、そんな台。





「パチスロ閃乱カグラ」
オーイズミが2017年に世に送り出したパチスロ台。
スペックはオーソドックスなA+ART機である。BONUSとCZからARTを目指し、ゲーム数を上乗せしていく事で大量出玉を目指す。


この台の注目すべき点はやはり、ほぼ常にと言っていい程液晶上に存在し続け、絶え間なく揺れ動くおっぱいである。原作はアクションゲームながら、その意欲的な演出によりCERO:D(17歳以上対象)となっている。忍者の学校に通う主人公達が一人前のくノ一を目指しながら悪に立ち向かう、といったストーリーなのだが、その彼女達のおっぱいが物凄く揺れる。兎に角揺れる。まあ揺れる。目を離したと思ったら揺れる。恐らく彼女達の生きる世界線では常に震度3程度の地震が起きており、それに伴って体が上下に動いてしまう修羅の大地なのであろう。液晶を見つめる内に、「我々の命はこの地面の深く下、プレートの御機嫌一つで脆くも崩れ去ってしまうのだな。今の生活に感謝しなければ。」と何だか感慨深くなってしまう。



閃乱カグラのおっぱいは通常演出に留まらない。ARTのCZの名前は「乳乳チャレンジ」、ARTは「百花胸乱」、BIG BONUSに至っては巨乳を通り越して「爆乳BONUS」だ。貧乳に親を嬲り殺されたとでも言うのだろうか、開発者の「貧乳死すべし」という怨念めいた感情が伝わってくる。液晶上だけならまだしもリールロックでも乳の揺れを再現するのだから、この台の闇の深さは底知れない。



勿論、演出はおっぱいだけではない。連続演出も多岐に渡る。彼女達は学生とは言えくノ一である。アメリカ人が聞けば「Oh！NINJA！」「KUNOICHI！」「Yumi Kaoru！」と大興奮必至の、日本が世界に誇る文化だ。そんな彼女達が挑む試練はこちらもまた日本の文化、節分のソウルフードとも言うべき恵方巻きを完食できるか、だ。一本や二本ではない。山の様にうず高く積まれた恵方巻きを四、五人の少女達で完食せねばならない。常識で考えれば不可能であるこの難関に、彼女達は臆する事なく挑んでいく。忍の道とは辛く厳しく険しいものなのだと、思わず涙腺を刺激される。




また当然の事ながら、くノ一である彼女達が立ち向かう敵も、歴戦の猛者が集う。街に屯ろするオールドスタイルな不良達や、町内鎖鎌大会6位入賞の実力者など、一筋縄では行かない相手ばかりだ。残念ながら私が住む千葉の片田舎では町内鎖鎌大会は開催されていなかったのでその難易度は推し量れないが、入賞は厳しい戦いなのであろう。「御歳80歳の大ベテラン 鎌斬のシゲさん」とか「新進気鋭のダブルチェーン使い タク君」とか「町内会長の愛人 マユミさん」などのライバル達を掻き分けての6位入賞だとすれば相当な強敵、苦戦は避けられない。想像だけど。





ここまでは演出について触れたが、ゲーム性も中々に特色ある仕上がりとなっている。ARTの初期ゲーム数はBONUS中かCZ中に獲得した巻物で決まる。巻物一つにつき50〜300Gの上乗せがあり、複数個巻物を獲得することもある。そうして得たゲーム数を消化する間に上乗せに関わる様々な状態を上げ、重ね合わせていくことで、ロングARTを目指す仕様だ。パチスロのゲーム性というのは最初の印象や合う合わないといったことがあるので、一概に素晴らしいとは言えないが、状態を重ね合わせていくシステムは「鉄のラインバレル」の覚醒の様で非常に夢が有り、爆発も期待できると思う。…思う。多分そう。きっとそうなんでしょう。そうって言ってる人がいた気がする。したことが無いので分からないですけど。



他にもこの台の素晴らしいポイントはまだまだある。リールは3本、御家芸のガタつきも無い。レバーを叩くとリールが回る。ストップボタンを押せばリールが止まる。小役が揃えば払い出しがある。音が出る。セレクターの不具合もあまり無い。全体的に四角いフォルム。色素が存在している。など、好評価に事欠かない。もはや閃乱カグラは只のパチスロ台ではなく、60円払う事で4秒間に一回揺れる巨乳を眺めることができるペイチャンネルつきのテレビにリールがついた画期的な工業製品なのだ。平成も間も無く終わりを告げるこの時代、娯楽の多様化は遂にここまで来てしまった。人間の業の深さを感じずにいられない。




オーイズミが送るおっぱいパチスロ閃乱カグラ。遊戯を続けていく内に、時間の大切さ、夜は家に帰り暖かい布団にくるまる事の幸福を教えてくれる素晴らしい台。皆様も見かけた際は是非一度御遊戯あれ。

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