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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-

パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-

2018.05.29

『負け犬』~決意

ラッシー ラッシー   パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-



男の指は太く、たくましかった。
撮影用のカメラは重い。照明器具もだ。
男はそれらを長年扱いながら、世界中を飛び回っている。
指が太くなるのも当然だ。


その指が肩へと深く喰い込み、俺はたまらず顔を歪めた。 物理的には抵抗も可能だったが、 そうはできない理由があった。

機材室は静かで暗い。 助けてくれる人などいない。

男「お前だろ? 分かってんだよ」
――「ですから違いますって」

男「お前の他に誰が言うんだよ?」
――「それは分かりませんが」

男「なんだお前? 先輩を疑ってんのか?」
――「…そういうわけでは」

男「じゃあお前しかいねーだろうがよ」

男は声を荒らげず静かに言った。指にギュッと力を込め、どうにか俺から希望する答えを絞り出そうとしている。

――「でも本当に僕じゃありません」
男「強情なヤツ。まあいい。2度と言うんじゃねーぞ」

――「………」

やっと肩の痛みから解放され安堵したが、何の解決にもなっていない。これから先も、こんなくだらないことが続くのだろう。まさか社会人になってもこんなことが現実にあるとは。 俺が就職した技術会社は、社長と俺の2人のみ。しかし俺は入社直後から出向といった形で、他の技術会社に預けられていた。そこの構造がまた複雑なのである。
 


A社はカメラマン・照明さん・音声さんが数十人在籍する大きな技術会社だ。とはいってもA社の正社員はわずか数名のみ。言うなればカメラマン・照明さん・音声さん専門の派遣会社である。

そしてフリーランスの中堅カメラマン2人が独立してB社とC社を作り、彼らの部下もA社に出向している。俺の会社の社長R氏は、その中堅カメラマン2人の後輩にあたる。つまるところA社内において、我がD社は極めて肩身が狭いのだ。

先ほど俺の肩に指を喰い込ませていたのはB社の社長。彼は絵に描いたような前時代的TVマンで、かなり荒っぽい性格だった。俺のことも「後輩の会社の社員」として可愛がってくれていたと思うのだが、1つだけ小さな問題があった。


組織のリーダーであるA社の社長は大の酒嫌い。当然飲まないし、「酒を飲んだ」という話題さえ嫌うほどである。逆にB社の社長は大の酒好き。「いいかお前ら、A社の社長には絶対に秘密にしろよ」と言いながら、よく夜の街へ連れて行ってくれた。

しかし不思議なことに、飲むたびA社社長にそれがバレる。誰かが密告しているとしか思えないが、その密告者が見つからない。結果として一番若手である俺が「推定密告者」となってしまったわけだ。もちろん俺は密告などしていないのだが…。

推定密告者とされてしまった俺は、B社の社長から執拗な嫌がらせを受けることになる。その内容を詳細に書いても構わないが、あまりに暗い話になるのでヤメておこう。同僚に相談しようにも、社内にはB社社長の仲間や部下がたくさんいて、誰が敵で、誰が味方か分からない。俺は仕事とは無関係なところでストレスを溜めながら、TV局に通う日々を過ごしていた。そして肩にアザを作られたその翌日。俺は遂に限界を迎え、自社の社長であるR氏に相談した。この人だけは絶対に味方なのだ。


――「昨日、またB社の社長にシメられまして」
R氏「おう、そうか」

――「え? いや、また『チクっただろ?』って俺のせいにされて、反論も聞いてくれないんです」
R氏「まあ、そんなこともあるだろ」

――「ええ? 会社の唯一の社員が、あらぬ疑いで嫌がらせを受けてるんですが……」
R氏「うん、我慢しよ。で、今から三点照明を教えるから…」

――「………(だ、ダメだコレ!!)」


R氏、まさかの興味ナシ!! いや、R氏も先輩であるB社社長が怖かったのかもしれない。それにしても、この態度はなんだ! 社員だぞ! お前の唯一の部下だぞ!! なんかもうちょっとフォローとかあるだろがい!!

ムダに波風を立てないのは大人として正しいかもしれないけど、普通に自分の部下があらぬ疑いで嫌がらせを受けてるのってイヤじゃない? 「ウチの社員、そんなヤツじゃねーけど」なんて、ビシッと言ってくれなくてもいい。せめて「ツラい思いさせてスマンな」くらいあるでしょうよ!

この一件によりR氏への信頼は全くなくなったが、とはいえ、せっかく潜りこんだTV業界だ。易々と去るには惜しい。月収6万円でこのストレスに耐え続けるのはイヤだけど、試用期間さえ過ぎれば。その一心で、耐え続けていたのだが…。

 

 

優しい嘘

目を開けると、スグに病院だと分かった。薄いベージュのカーテンに点滴。点滴の針は、俺の左腕に刺さっていた。状況をつかめずに枕元のナースコールを押すと、しばらくして医師と看護師が現れた。


医師「五十嵐さんで間違いない?」
――「はい、ここは…」

医師「初台の○○病院です」
――「初台?」

バイトしていたCSの制作会社は笹塚にあった。初台はその2つ隣の駅だ。

医師「五十嵐さん、救急車でここに運ばれてきたんですよ」
――「救急車? あ、ヤベ! 仕事!!」

医師「通勤途中だったんですね」
――「ええ、会社の最寄り駅で降りて…降りて…」

医師「駅の階段に倒れていたそうです」
――「階段で? 原因は?」

医師「脱水でしょうね。今、点滴で水分を補給しています」
――「脱水…」

医師「あと…なにかストレスとかありませんか?」
――「ストレスは…ありますね」

医師「うんうん。仕事も大事ですが、まずはゆっくり休んでください」
――「…はい」


点滴を引っ張りながら病院の外へ行き、社長のR氏に連絡した。幸い俺はまだ見習いのため、いてもいなくても撮影現場に支障はない。R氏は「あとで様子見に行くから、こっちのことは任せておけ」とのことだった。点滴が終われば、また医師の診察がある。俺は再びベッドに横になり、目を瞑った。

脱水症状。これはたぶん医師が俺に配慮した優しい嘘だ。自分の身体だから分かる。悪いところは1つもない。家を出る前にお茶も飲んだ。おそらく心が仕事に行くことを拒否したのだろう。医師も身体に悪いところはないと分かり、心中を察して「脱水症状」と診断したのだろう。俺のような患者は珍しくないのかもしれない。

仕事を紹介してくれた学校は裏切れない。
就職を喜んでくれた親も、ガッカリさせたくない。
社長であるR氏の期待は…どうでもいい。
俺は…この仕事を続けて幸せになれるだろうか。

点滴後の診察を終えると、ふとバイトしていた制作会社に寄ってみようと思った。身体の調子はさほど悪くないし、たった二駅の病院に運ばれたのも、なにかの縁かもしれない。

 

 

恩人の声

この日はたまたま収録がなかったらしく、制作会社のメンバー全員が事務所にいた。懐かしい先輩DやADも。そして新しい社員さんも。突然の訪問にもかかわらず、社長はスグに冷たいお茶を出してくれた。


社長「どうした? ずいぶん顔色が悪いな」
――「出勤中に倒れて、初台の病院に運ばれちゃいました」

社長「大丈夫かよ。今、○○○(TV局)で働いてんだろ?」
――「技術会社だから、局員じゃないですけど」

社長「あまり楽しくないのか?」
――「う~ん、そうですね…」

社長「ウチでやってたときは、あんな楽しそうだったのにな」
――「ええ、お陰さまで」

社長「やっぱりお前、パチスロが好きなんじゃねーか?」
――「最近は金がないし忙しいしで、なかなか打てませんが」

それもストレスの原因の1つかもしれない。相変わらず休みの日はホールへ行くが、なにせ月収は6万円である。貯金を切り崩し「花火百景E」で軽く遊ぶ程度だ。

社長「やっぱりお前は、パチスロのそばにいるべきじゃねーか?」
――「…そうかもしれません」

先輩D「なら話は早い。いつから(現場に)出られるんだ?」
――「エッ!? つまり、またココで…」

そうだ。映画やTVの世界に憧れて上京してきたが、俺の居場所はそこじゃない。居心地がいいのはココ。パチンコ・パチスロに触れられる環境だ。この制作会社で働けたら、どんなに幸せだろう。

社長「いや、違うな。お前が働くべきはココじゃない」
――「エッ!?」


社長「お前、ライターになりたいんだろ?」
――「いや、そんな…俺がなれるわけ」


社長「たぶんウチに来たって同じだよ。お前はライターになりたいんだ」

なれるものならなりたいが、あまりに非現実的すぎる。勝算がない。そもそも雑誌のライター・記者なんて、どうやったらなれるんだ!? 文章なんて…。

社長「お前、学校でなにを学んだんだ? 脚本・台本だって書いただろ」
――「はい…学びました」

社長「まだ…22か? なんにでもなれるじゃねーか」
――「………」

社長「飛び込んでダメだったら、また辞めればいいじゃねーか」
――「………」

社長「なんなら必勝本編集部、紹介してやろうか?」
――「エッ!?」

社長はもちろん各誌の編集部と繋がりがある。コネを使えばライターとして採用してもらえるかもしれない。 ちょうどこの頃、この制作会社はメキメキと成長しており、スタッフが足りなかった。だから先輩Dも「いつから出られるんだ?」と訊いたのだ。もしここで俺が「雇ってください」と頭を下げれば、社長は雇ってくれたかもしれない。しかし、社長は俺を甘やかさなかった。挑戦して来いと。自分が本当にやりたいことをやってみろと。

だが…このまま社長のコネで編集部に入り、また辞めてしまったら、社長の顔に泥を塗ってしまう。それに、今まさに学校から紹介してもらった仕事を辞めようとしている身だ。またコネで就職なんて、あまりにも格好悪すぎる。もうすでに負け犬だが、せめてここだけでも意地を見せねば!


――「紹介は必要ありません」
社長「そうか」

――「社長の手は借りず、普通に履歴書を送ってみようと思います」
社長「おっし、やってみろ。その前に、今の会社の社長に謝らないとな」

――「そうですね。おじゃましました!」
社長「編集部から五十嵐の名前聞くの、楽しみにしてるよ」

――「はは…どうでしょうか」

これから今の会社の社長であるR氏、そしてお世話になったA社に謝らねばならない。それでも気分は悪くなかった。B社社長の嫌がらせに屈した形になったのは癪だが、そんなことはどうだっていい。意地になって続けていても、いずれ疲れ切り、きっと辞めていたはずだ。その時間が惜しい。まだ守るものがない今だからこそ挑戦できる。


自宅のボロアパートに戻ると、スグにR氏へ電話を掛け辞意を伝えた。今でも俺のようなハズレを引かせてしまったことを申し訳なく思う。余談になるが、R氏には代わりにフリーランスの女性カメラマンを紹介した。しかしスグに俺と同じような状況になり、長くは続かなかったらしい。今でもその女性カメラマンに会うと「R氏はマジ最低だった。なんで紹介したの?」と責められる。なんか…生け贄みたいな形にしちゃってゴメンね。R氏はあまり人の上に立つタイプではなかったのかもしれない。まあ、俺も人のことは言えないけど。

かくして俺の会社員生活は、わずか半年で幕を下ろした。その後、暗黒のニート生活を2ヵ月続け、いよいよパチスロ攻略誌編集部の門を叩くことになる。


「どんなに辛くても3年は続けろ」なんてよく言うけど、俺は賛成しかねるね。泣こうが喚こうが、人生は1度しかない。若くて挑戦できる時期なんて短いんだ。我慢を重ね、疲弊しきったまま数年を棒に振るくらいなら、逃げたっていいんじゃないかと。まあ、成功者じゃない俺が言っても説得力ないけど。そう気付かせてくれたのは、あの制作会社の社長でした。

お金も大切だけど、
「好きなことをしながら生きる」。
それに勝る喜びはないでしょう。

 

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ラッシー
代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-

山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。

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