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SENZIN伝

SENZIN伝

2017.10.06

佐藤さん 後編

タイルまん タイルまん   SENZIN伝


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深夜の皆が寝静まった施設内を1人大声で叫んでいる佐藤さんの居室へ豪腕先輩は向かった。

豪腕先輩の表情は声を掛けるのも躊躇う程、険しいものだった。

「母さーーん!助けてくれーー!」

ベッド上に横たわりながら叫ぶ佐藤さん。

豪腕先輩はベッド脇にあった丸イスに腰をおろし、佐藤さんに話しかけた。

「佐藤さん。母さん死んだでしょ?」

度肝を抜く発言だった。 静かに!と注意する訳でもなく、認知症の方に現実を直球でぶつけた。

(オブラートに包みなさいよ!)

豪腕先輩の後ろでその発言を聞いていた私は思わずツッコミを入れてしまった。


「母さん死んだのか!?」

佐藤さんもパニックに陥っていた。それはそうなる。

現実では母さん、つまり奥さんは既に亡くなっている。

が、認知症患者である佐藤さんの中では奥さんはまだ生きているのだ。

新鮮に驚かれてもなんの違和感もない。

「いつ死んだんだ!?なんでだ!?あんた誰だ!?」

糖尿病で視力を失った目をギョロギョロと泳がせて佐藤さんは叫んだ。

どうする……?

佐藤さん発狂してるぞ……。


不安な顔で私が佐藤さんを見つめていると、豪腕先輩は私の方を向いて

「まぁまぁ……」

と、なだめてきた。

何故私がなだめられたのだろうか? なだめる相手が違うぞ!

「佐藤さんね、母さんは何年も前に死んでるよ?覚えてない?」

またこの人は直球を!

「母さーーん!死んでねーべ!?水飲みてーー!母さーーん!助けてけろーー!」

佐藤さんは絶賛パニック中であった。

豪腕先輩の声など届いていないのだろう。

それでも豪腕先輩は佐藤さんに話しかけるのを止めなかった。

「一緒にパチンコしさ行った母さんの事、覚えてない?」

突然ピタっと佐藤さんは叫ぶのを止めた。

そして一言。

「それは覚えてる。」

パチンコというワードが耳に入ったのだろうか?

「覚えてるでしょ?パチンコはよく何打ったの?」

「色んなの打ったなー。」

「そっかー……(タイル。タイルちょっと……。)」

豪腕先輩は、佐藤さんとの会話の合間に小声で私を呼んだ。

「……昔のパチンコの機種って何あったっけ?」

知らないわっ!貴方より歳下の私が知る由ないだろっ!

(大工の源さんとかじゃないっすか?ルパンとか、海とか?)

私は思いつく限りの有名なパチンコ機種を伝えた。

左手の親指を立てて「グッジョブ!」と言われた。


「昔ならルパンとか打った?」 早速使った。

「……ルパン?」

どうやら佐藤さんはルパンを打たれてないらしい。

打ったのかもしれないが、記憶には残っていないのだろう。

豪腕先輩は再び私の方を向き「佐藤さんルパン本当に打ってたのか!?騙したべ!」と、私を疑ってきた。

知らないわっ!! 何故この人は私より認知症患者の記憶の方が正しいと判断しているのだろうか?

そもそも打った事あるなんて一言も私は言っていない。

「ルパン三世!打ったでしょ?」

豪腕先輩は佐藤さんに聞き直した。打った事があると何故決めつけてるのかは謎だが。

「知らね。」

「タイルこの野郎!」

だから何故私に怒りの矛先が向くのか!

「大工の源さんは?」

「源さんは打ったなぁ!」

佐藤さんはニッコリと笑った。 源さんは覚えていたようだ。

「勝ってたの?」

豪腕先輩が聞くと佐藤さんは頷いた。

「連チャンが止まんなくなってぶっ壊れたかと思ったよ!」

初代大工の源さんは、爆裂機として人気を博した。専門誌や漫画などで数多く特集を組まれており、オカルトも沢山生み出される程だったらしい。

佐藤さんも、初代源さんの魅力に取り憑かれた1人だったのかもしれない。


「あぁ……またパチンコやりてぇなぁ。」


そう言って佐藤さんは右手でパチンコのハンドルを握る真似をした。

豪腕先輩はうんうんと頷いた。頷きながら

「目が見えないでしょ。」

やめとけ!なんの頷きだったのだっ!

「んだな!見えねえ!」

佐藤さんも自虐ネタをするな!

豪腕先輩はヘラヘラと笑いながら

「佐藤さん、この間パチンコ屋で息子さん見かけたよ。というか、俺の隣で打ってたよ。」

佐藤さんには毎日夕方に面会に来られる息子さんがいる。

「倅もパチンコ好きだからな。勝ってたか?」

「いや、負けてたよ。」

「やっぱり。倅は下手くそだからなぁ!」

「うん、下手だね!」

ハッキリ言う事ではないっ!

「佐藤さん、俺は勝ったよ。」

何故報告したのか?

「兄ちゃん上手いなぁ。」

「パチプロだから。」

貴方は介護福祉士だ。変な所で嘘をつくのはやめていただきたい。

豪腕先輩は、ひと息ついた後に優しい口調で佐藤さんに、 


「一緒にパチンコ打った母さんはもういないんだよ。どんなに叫んだって。」

先程まであんなに喉が切れんばかりに叫んでいた佐藤さんは黙った。

「そうか……母さん死んだな。」

佐藤さんは憑き物がとれた様な穏やかな表情だった。

「俺だけ残ったんだった。」

そう呟く佐藤さんの右手はまだ、その場に存在しないパチンコのハンドルを握っていた。

「パチンコ打ちてえなぁ。」

おやすみ。 そう言って豪腕先輩と私は居室を後にした。



次の日、佐藤さんは病院へ行った。容態が急変した訳ではない。

家族と施設側の方針の違いである。 高齢者施設は本格的な治療をする場ではない。

ザックリと言えば生活する為の場である。

本格的な治療を望むのなら病院に行った方が良い。佐藤さんの家族と話し合った結果、病院に行く事となったのだ。

その後、佐藤さんがどうなったのかは分からない。

しかし、もう二度とパチンコを打つ事は無いというのは確かだ。

我々介護福祉士は何が出来たのか。

豪腕先輩が言った様に、そもそも何かをしてあげると考える事自体が烏滸がましいのか。

烏滸がましい……そう言った張本人が佐藤さんにとった行動は、私に放った言葉に逆らっている様に思えた。


我々介護福祉士は、嘘をつく職業だ。

精神的に不安定になった状態、いわゆる不穏症状が強い重度の認知症患者の施設利用者を落ち着かせる為に、ありもしない嘘をつく事は日常茶飯事である。

帰りたいと外に出ようとする利用者に対して、もうすぐしたら家族が迎えに来るからと言って一時的に落ち着いてもらう等である。

勿論、迎えになんて来ない。

そして、そのやり取りを利用者本人が数分で忘れて、同じやり取りを繰り返す。

まるで巻き戻したビデオの様に。

1日に数十回同じ事をする時だってある。

その度に言い方は悪いが嘘をつき、利用者の不安を一時的でも取り除くのが介護福祉士の仕事の1つでもある。

因みにだが、私はある女性利用者に亡くなった旦那と勘違いされて、帰ろうとする所で捕まり、夜の営みを誘われた事がある。

抱いてやるから布団で大人しく待ってろよ!と、言うと女性利用者は喜んで居室へ戻っていったのを確認して、私は何事もなく自宅へ帰っていった。

勿論その事を利用者は覚えていない。

次の日には、また旦那と間違えて接してくるだけである。

そんな嘘をつかず、真正面からぶつかっていった豪腕先輩。

後に豪腕先輩に聞いた。何故、佐藤さんに対してあの様なコミュニケーションをとったのか?


「パチンコ好きに根っから悪い奴はいない。それに佐藤さん本人は既に忘れたかもしれないけどさ、少しの時間だけでも色々と思い出したじゃん?薄っぺらい安堵より……良いと思う。」


佐藤さんが私達が居室を後にする時にエアーで握っていたパチンコのハンドルは、その場には存在していなかった。

しかし確かにあの手で、あの角度で、隣に奥さんが座って打っていた過去は存在する。

奥さんを亡くした忘れたい過去を思い出したかもしれない。

同時に奥さんとの忘れてはならない大切な思い出も思い出した筈。 誇張した表現かもしれないが、豪腕先輩は佐藤さんを長い悪夢から救った気がした。

嘘のない介護。

理想的な介護を平然とやってのける豪腕先輩に私は感動した。

「あとはさ……佐藤さんの息子より俺の方がパチンコ上手い事、教えたかった。」


エゴが凄いっ!

 

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タイルまん
代表作:SENZIN伝-僕らもいつかSENZIN-

祖母から父へ、父から自分へと脈々と受け継がれてきたギャンブルの血筋。何故か博才だけは受け継がれなかった哀れな駄目人間。
今日も貴方と同じ空の下の何処かで負けています。

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