あのときオレはクズだった　第７回

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

コア
【メーカー】岡崎産業
【導入日】1999年
【タイプ】Aタイプ

【田中氏のコメント】
1999年にデビューした岡崎産業の4号機。告知が発生してデジタルに7が表示されればビッグ確定というシンプルな仕様だったのだが、リール配列と制御の盲点をついて、特定の手順を実践すれば2種類の6枚小役を同時に揃えられる(12枚の払い出し)という攻略法が発覚。機械割は設定1でも110％オーバーと、絶大な効果を誇った。

暗い個室の中で発見した攻略への喜びが、スロライターの道へとつながっていく……

　
　悪魔の白い粉。あの一件があってからというもの、なんとも気の抜けた、力の入らない日々を送っていた。しょせんは愛媛の田舎者。無理に都会に馴染もうとしても体に染みついたものがそれを許さないわけで、養成所にもいかず、なんとなく打ちに行って、なんとなくバイトへ行くだけの日々が続いていた。そんなときに先輩の山下さんに連れていかれたのが、宗右衛門町のゲートをくぐってすぐにあった、関西では有名な某テレクラだった。

　いまではめっきり数も少なくなってしまったが、テレクラとはテレフォンクラブの略で、男性が店舗内にある小さな個室に入り、外部からそこに電話をかけてくる女性と会話をしたり、話が合えば待ち合わせをして外で会ったりする、いわゆる男女の出会いを取り持つ場。電話を受けるのには一般的に｢早取り制｣と｢取次ぎ制｣、二つのタイプの店があるのだが、そこは前者。つまり早取りの店だった。

　取次ぎの店は個室でボーッとしていても、自動的に女性からの電話が順番に回ってくる。小さい備え付けのテレビでエロビデオでも見ながら電話が鳴るのを待っていればいいわけだが、早取りはそうはいかない。かかってきた電話を取れるかどうかは完全に早い者順。回線をつなげられるかどうか。それぞれの個室内で戦士達が息を潜め、集中してその時を待っているのである。

　正直、初戦となったその日は完敗だった。たった一本の電話も取ることができず店を出ることになったわけだが、スロッターの性質とでも言おうか。どうにか研究して、攻略したいという気持ちがわき上がり、そこからは修行の日々が始まった。

　まず、電話の音が鳴った瞬間に受話器に手を伸ばしたのでは遅すぎるということで、ランプに注目した。そこの電話は、音が鳴るよりも一瞬早く、着信のランプが赤く光る。いわゆる南国育ちなどのパトライト系機種が、キュイン音よりも一瞬早く告知ランプが光るのと同じ原理なわけだが、いくら赤く光った瞬間に受話器を上げても、やっぱりまったく間に合わなかった。それならと、最初から受話器を上げて耳に当てておき、指でフックを押さえておく。そして、ランプが光った瞬間にフックから指を離す。これで完璧だろうと、フル攻略で機械割は100％を超えるだろうと思ったのだが、それでもまだ取れない。もう無理だと、諦めますと、隣の部屋で粘る山下さんにそう告げるべく部屋に入ったら、そこには完璧なフォームで戦いに挑む戦士の姿があった。

　受話器を耳に当てて、フックに指を置く。ここまでは間違っていなかったのだが、その指。フックに置いた指は0.7秒おきに上下に動いており、つないで切って、つないで切ってという動作をオートマチックに繰り返していた。そして、指を上げた瞬間と電話がかかってきたタイミングが偶然、事故的にぶつかったときに回線がつながる。そこではじめて｢もしもし…｣と会話がスタートするというわけだ。そりゃ、電話に合わせて動いていたのでは間に合わないわけだ。

　つながっても指が止まらず切ってしまうこともあると言っていたが(手が止まらず勢いでリールを止めてスイカを取りこぼすようなもんだな)、こう、なんというかこの｢攻略している感｣というのには何ものにも代えがたいわくわくと、かっこよさがあった。恐らくこれも、自分がパチスロ攻略誌で働きたいと思うようになったきっかけのひとつなのだと、いま振り返るとそう思う。

　そんなこともあって、なにかを突き詰めて攻略するって面白い。そんな意識が芽生えはじめていたとき、たまたまコンビニで手に取ったパチスロ雑誌。そこに書かれていた文字を見て、目を疑った。

｢岡崎産業のコアに攻略法が発覚。小役を複合で揃えれば設定1でも機械割110％超！｣

　特定の手順を実践すれば6枚小役を必ず複合の12枚役として揃えられるようになり、通常時のコイン持ちとビッグの獲得枚数が飛躍的にアップ。結果、設定1でも機械割が110％を超えると記事には書いてある。それ以前の攻略法についてはこのときまったく知らなかったので、いわばこれが自分の出会った初めての攻略法。何事も攻略することに楽しみを見出しはじめていた自分にとって、こんなに心の踊る話しはなかった。

　調べると大阪にはすでに設置がない上に、そもそも交換率が悪すぎる。そこで地元の友人に聞き込みを行ったところ、松山の繁華街にある5.5枚交換店に6台の設置があり、特に攻略法禁止などの貼り紙はないと言うではないか。テレクラで待ち合わせをして、態度も体格も大きなロシアと日本のハーフ(推定体重80キロ)とメシなど食っている場合ではない。早々にメシを切り上げ、その日の晩には大阪の南港からフェリーへ飛び乗り、地元の松山へと向かったのだった。

《おいおい、それじゃ受話器取れないぜ？》

クズの成績表：★★★★★（続・山下さん）

いやぁ、山下さん。いいね、いいよ。段々とご尊顔がイメージ出来るようになってきましたよ。テレクラでカチカチやってるお姿をね。
田中さん、とりあえずテレクラ動機でライターになったことを読者さんに謝ってくださいね。

田中氏の素晴らしき活動はコチラから！

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田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。