あのときオレはクズだった　第34回　~第2部ガイド編~

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

バブル到来を告げるイベントのスタート

　彼女との5年間の同居生活を解消した自分は、この世の自由を得る代わりに、家賃と駐車場代合わせて月額14万円の十字架を背負うこととなった。

　とはいえ、当時は１ヶ月のうちに何台も話題機種が市場に出て、それを特集した増刊がばんばん出ていたパチスロ華の時代。原稿もあればデータ取りもあり、リセット＆宵越し天井狙いさえすればパチスロでも勝てる。それだけで金銭的にはなんとかやっていけるレベルだったんだけど、このタイミングで、マッパチのおふたりがBSでテレビ番組を始めるから、そのフォローでお前も出演しないかというお話があった。

　正直、自分がなにをやればいいのかわからないまま打ち合わせという名の飲み会に顔を出すと、そこにはマッパチのふたりと塾長おじさん、ひやまっち、そしてスーツを着た大人が数名いた。

　恰幅のいいボスらしき男性が説明するところによると、BSで始まるパチンコ番組内のワンコーナーでパチンコ屋を改革するという趣旨の企画があって、それをマッパチが担当するとのこと。ただ、ふたりでは仕事量的にさばくのは難しく、また、スケジュールの都合でふたりが必ず揃うとも限らないので、我々がそのサポートとして入るということだった。

　なんだかよくわからないまま、はいはいとうなずいていたら、あっという間に収録前日。どこだったか場所は忘れたが前乗りで前日のうちに移動したのだけど、用意された新幹線はグリーン車。駅を出るとスタッフが車で迎えに来ており、豪華な食事をごちそうになり、きれいなホテルに泊まるという、まさに至れり尽くせりの旅。自分がなにかスターになったんじゃないかと、そう勘違いしてもおかしくない対応に、ただただ驚くばかりだった。

　もちろん、ただ豪華な旅をしているわけではない。前日のうちから事務所に行って店長と全台の設定配分を打ち合わせ。渋る店長を相手に、１台でも高設定を増やすために３時間も４時間も交渉するし、打ち手にヒントを与えるために毎回、高設定の配置にも気を配る。朝イチは開店の何時間も前に店に入って出目の仕込みをして、開店したらマイクアナウンスをしたり、ボーナスを引いた台をじゃんけんで開放したりと動き回り、そしてそのすべてを撮影するという、放送10分程度のワンコーナーとは思えないほど時間と金をかけてそのすべてが行われるわけだ。

　旅ができて、その土地の旨いものを食えて、お客さんが高設定をつかめるチャンスが増えて、ギャラまでもらえる。なんて良い仕事なんだろうか。

　ここでひとつひとつの仕事の単価は書かないけれど、いまからおよそ10年前。原稿とデータ取り、たまーに呼ばれる映像系のお仕事にパチンコ屋のイベント、それにプライベートでのパチスロの勝ちを含めると、年収…いや、パチスロの勝ちを含めたものを年収と呼ぶのはどうかと思うので、自分で稼ぐ1年間のお金というのは、25歳にして1000万円を超えていた。愛媛でパチスロばかりやっていたなんの取り柄もないバカが、この間まで消費者金融に借金して首が回らなくなっていたクズ人間が、週に3回か4回か、誰に頭を下げるでもなく気ままに仕事して、1000万円もらえるわけだ。自分の世代にとってバブルというのはテレビで聞いたことのある過去の話でしかなかったが、2006年のパチスロ業界。5号機が出始めて少しずつ業界が動きつつあるその時期に、自分の周りにはたしかにバブルがあった。

　まあ、世の中にはお金を稼ぐ人はたくさんいて、そんな人たちにとっては1000万円なんて小銭なのかもしれないが、自分のような人間にとっては十分すぎる額なわけで、なんというか、気持ちに余裕が出てくる。気持ちに余裕が出てくると仕事以外の部分、プライベートも充実してくるという好循環が生まれ、このあたりからパチスロ以外の趣味にも積極的に手を出すようになった。そして、その筆頭が草野球だった。

　ガルさんが作った高田馬場東陽バッツという草野球チームにはひやまっちの他に無道さんやういちさんといったガイドライターの面々が所属しており、それ以外にも強烈な個性を持った人間が入っているクレイジーな野球チーム。野球をして、酒を飲んでバカ騒ぎをするというのがとても楽しかったんだけど、2005年も終わりに近づいてきたとある日。宴会部長の真武という男がこんなことを聞いてきた。

｢今年の合宿はサイパンに行くけど、田中君パスポート持ってる？｣

　毎年、シーズンオフに関東近郊の温泉地へ1泊2日で行って野球を行うイベントがあるのは噂に聞いていたが、サイパン!?　わざわざサイパンまで草野球をやりにいくなんて、なんてクレイジーなんだろうか……。

　自分はパスポートなんて持ってないし、そもそも飛行機が大嫌い。海外なんてまったく行きたくなかったのだけど、強引なチーム方針によってサイパンへ草野球をやりに行くことになった。そして、このサイパン合宿が、いまのフィリピンでの活動のひとつのきっかけになるのだから、まったく人生というのは面白い。

あのとき打っていた「パチスロ北斗の拳SE」

【メーカー】Sammy　【販売年月日】2006年7月　【タイプ】Cタイプ
4号機に比べて出玉性能の劣る5号機が徐々に出始める中で、みんなに期待されて世に登場した『北斗の拳SE』。イベントにおいても当然、主力となる機種になるだろうと期待されたわけだが、その機械割の低さもあって期待倒れに終わるばかりか、世の中から酷評された残念な機種。もはや、SEがなんの略だったのかすら思い出せない。

クズの成績表：★☆☆☆☆（はぁ？1000万？）

はい？年間収入1000万円？はい？

え？誰が？え？田中氏が？？

絶対に世の中おかしい。おかしいって。だって一皮むけば単なるパチスロ好きですよ？それが1000万円とは…。

年間収入1000万円って大企業のそこそこ偉い人レベルですよ。夜の街で「ナガブチ」って呼ばれてパンスト買いに行かされてた男がねぇ。

うーむむ、なんか気分が悪くなったから、とりあえずドリームジャンボで4万枚くらい出してくるわ。

田中氏の素晴らしき活動はコチラから！

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田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。