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元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~

元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~

2023.08.08

クソ台じゃないよ! ちょっとしくじっただけ! 元店長が語る「エヴァART(リンゴ)」のしくじり物語。

元・店長カタギリ 元・店長カタギリ   元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~


たとえば近所のラーメン屋に行ったとしましょうよ。何年も足を運んでいる近所の店ですわ。いつも注文しているのは醤油ラーメン。さほど美味くはないけれど、舌に馴染んだスープと可も無く不可も無い麺の食感。でも、それでいい。むしろ、それがいい。贅沢感は無くともじゅうぶんな満足感が味わえる。自分の求める変わらぬ日常がそこにはあるのです。

ところが、いつものように店に入ったら内装が一新されていて、油と手垢にまみれていたメニュー表は和紙で作られた『お品書き』へと保留変化。いつもの醤油ラーメンは『せうゆらあめん』にモードチェンジ。汚い割烹着を着ていた脱獄犯みたいな顔をした店主は、パリッとした作務衣を着て身だしなみも整え、新たなステップアップ予告。そしてお待ちかねの新らあめんは透明な激アツスープに一糸乱れぬ美しさで浮かぶオシャレ麺。不愛想だった店主に「今は、こういうのが流行っているのですよ」と裁判長のような口調で言われたら、もはやそれは自分の求めた味、居心地の良い環境じゃなくなっちゃいますよね?


パチンコやパチスロの人気シリーズにも、似たようなことが言えると思うのです。定番の演出や出目があり、そして何より打感がそのまま。新台であっても基本的な軸は変わらずに、派生した部分にだけ新しい変化があれば良い。そう、変わらないからこそ良いと考えているファンは決して少なくないのです。  

新世紀エヴァンゲリオン。パチンコは2004年の初代登場から19年、パチスロも5号機初期の2005年から今年で18年目と、いずれも長きに渡りファンを魅了し続けてきた説明不要のビッグタイトルであることは皆様もご承知の通り。しかしながら過去を振り返ってみると、その全てが必ずしもヒット作となった訳ではありません。

今回ご紹介するのは、それまでのパチスロ・エヴァシリーズの王道であった『A+RTタイプ』ではなく、初の『A+ARTタイプ』という異色作。それ故にヒットに恵まれなかった『しくじり機種』として記憶に残る迷機と言えるでしょう。では参りましょうか。

 

★今回のしくじり機種は『EVANGELION  ART(ビスティ)』

▲EVANGELION ART(2013年/ビスティ)

ホールデビューは2013年2月。ビッグとレギュラーの両ボーナスおよび1Gあたりの純増枚数1.6枚のART『EVA RUSH』で出玉を獲得するシリーズ初の『A+ART機』であるのが本機最大の特徴です。

そう、シリーズとしては初ではありますが当時の『A+ART機』としては特筆すべき点の無いスペックであるのも、セールスポイントとしてはパンチ力不足ですな。

 

しくじりポイント1:エヴァシリーズファンを困惑させる冒険し過ぎた路線変更

▲あらゆる面で当時話題となった「リンゴ」

従来のエヴァスロといえば、上段リプレイハズレや中段ベルハズレ等の明快なリーチ目によるフラグ察知が定番でした。また一般的な『A+ART機』の場合でもチェリーやスイカ、あるいはチャンス目といったレアフラグ成立がボーナスの契機となる機種が大半です。

ところが本機の場合、そもそもチェリーもスイカもナッシング。さらにボーナス期待度の高いフラグは、右上がり揃いのリンゴもしくはリプレイ図柄という違和感のある成立形なのです。

つまり従来のエヴァスロファンのみならず、A+ART機を好むユーザーにとっても『とっつきにくい』ゲーム性となっていたのです。 目押し不要の完全フリー打ちでも小役の取りこぼしナシ、そこが本機のセールスポイントでしたが、斬新なリール配列や図柄の採用によって、成立役がわかりにくくなってしまったのが不評の要因となってしまったのです。

 

しくじりポイント2:爽快感・高揚感に欠けるART

何をやらされているのかイマイチわかりにくい通常時の先にあるのはチャンスゾーン、もしくはボーナスを経由して突入するARTとなるわけですが、こちらもまた難解です。

1セット30ゲーム&ART継続を賭けたバトルパートで構成されるARTは純増枚数1.6枚、消化中にリンゴが揃えばゲーム数の上乗せとなるのですが、これがまた修行の如き高難易度。リンゴが揃っても大きなゲーム数を乗せる爽快感ナッシング、ボーナスが成立したとて大きなチャンスに繋がりにくい。ようやく突入したART中にもリンゴ揃いと、ボーナスを30ゲーム少々のART中に積み重ねていかなければならない『無理ゲー感』が本機最大の苦行ポイント。

左リールにスイカがスベってきて上乗せか、それともボーナスか?  といった出目による期待感を味わうことのないARTが苦痛であることを、私は本機で学びました。そう、ここでもやはり出目がダメ、からの即ヤメ、顔は青ざめ。苦し紛れにちょっと韻を踏んでみました。

 

★元店長カタギリと『エヴァART』

本機のホール導入時、私は某ホールでパチスロの設定担当者の任に就いておりました。エヴァARTの導入台数は8台。とにかく稼働を上げたい。そんな想いで平均設定は3以上、導入から2週間以上も毎日最高設定を投入し、設定6を複数投入する日もありました。

それにも関わらず、当時の人気機種であったバジⅡやバイオ5、ゴッド系譜や攻殻機動隊の稼働には遠く及ばず、頭を悩ませる日々が続いておりました。自身も何度かホールに足を運び、何とか店舗ブログでエヴァARTの魅力を伝えて、稼働を上げられないかと打ち続けていましたが、いつ何時も『リンゴ揃い待ち』のゲーム性には とうとう耐えられなくなってギブアップ。

「部長スミマセン、この機種の稼働は上げられそうにないです……」と泣き言を漏らしたところ、部長も「ああ、アレは無理だよ、面白くないもんね」と涼しい顔で返答。アンタが導入を決めた台だろ、と喉元まで出かかっていたセリフをなんとか飲み込みましたが、今となっては良い思い出…… ではないですね、やっぱり。

 

★まとめ~定番を廃し、既存ファンが離反したエヴァART~

ボーナス搭載型にもかかわらず出目の魅力に欠け、ART搭載型なのにAT機のような打感。そこにスロエヴァらしさが感じられず長期稼働に繋がらなかったように思うのです。

メーカーとしては人気シリーズの既存ファンを取り込みつつ、新規ファンも獲得したかったはずですが、やはり『出目』が既存ファンにとっては違和感に、新規ファンにとっても魅力不足となってしまった点が致命的だったように思うのです。

馴染みの店の醤油ラーメンは、定番の味だからこそ固定ファンに愛されるのですから。大胆な変化は拒絶反応に繋がるというリスクが生じることを、メーカーが学ぶきっかけになる作品だったと言えるのではないでしょうか。さて、スマスロ・スマパチのエヴァはどうなるのか。期待と不安を抱きつつ、私は今日も近所の店で醤油ラーメンを食べるとしましょう。

 

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元・店長カタギリ
代表作:しくじり店長

シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。

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▲3店舗を潰した『しくじり店長』の人生録をお楽しみください。(完結)

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